SUBERANAI BLOG すべらないブログ

洗えど洗えどヌメリが取れないスーパー銭湯・・・床の汚れとの格闘

今時の子供達に掃除のイロハを教え込んでいる家庭、学校がどれくらいあるのだろうか?学校での掃除当番があるのは承知しています。

が、私が少年であった頃とは様相が違うようです。佐賀県唐津市の田舎育ちのわんぱく坊主であった私ですが、冬でもバケツに雑巾が定番で、教室の中、廊下を当番にあたった同級生と二人並んで競争しながら雑巾掛けをしたものです。家でも同じでしたね。

畳を拭いていると雑巾をもっときつく絞れ、拭いた後はカラ拭きせんか、母ちゃんによく怒られたもんです。掃除、清掃についての基本を、しっかり身に付けている筈の私が・・・実は、この掃除、清掃に関ることで、滑り止め施工溶剤開発に匹敵するくらい苦労することになるとは夢にも思いませんでした。

大阪のスーパー銭湯の滑り止め施工

大阪のあるスーパー銭湯の滑り止めを施工した時の出来事を事例に記します。

1日の利用者が約1,200名ですから、繁盛しているスーパー銭湯ですね。5年前に温泉が出て、しっかり地元に定着しているようです。

御影石のバーナー仕上げ

現場調査に行きますと、浴場の床は、御影石のバーナー仕上げで、濡れている箇所が鈍く光っていました。裸足で歩いてみると、気持ちが悪くなるほどヌルヌル、ベタベタ感があり、当然ながら滑っています。

施設管理者と面談し、日常的なメンテナンス等について尋ねてみました。毎日、契約業者が営業終了後メンテナンスしているし、年に4回は休館日に定期清掃も入れているとのこと。“その割にはえらい汚れとるな”と思いつつ現場調査を終えました。

数日後、施工日も決まり段取りに入りました。現場は男風呂、女風呂合せて300平米程度です。施工時間は、営業終了後となり、夜の0時~夜明けの5時までの間。

5時間と施工時間は十分ですが、如何せん真夜中の施工である事、床が堆積した体脂肪で鈍く光るほど汚れていること等を考慮し、作業人員を通常5名から8名に増員し臨むことにしました。

アルカリ洗剤(PH12レベル)でポリッシャー洗浄

施工当日、始めに濃い目にアルカリ洗剤(PH12レベル)を調整し、2台のポリッシャーで洗浄です。堆積した体脂肪は基本的に酸化していますから、濃いアルカリ洗剤で洗浄している最中は、洗剤と反応し少量ですがアンモニア臭が発生します。

ポリッシャーを低速回転に変換し、ゆっくりと洗浄していかないと体脂肪は簡単には落ちません。1時間も過ぎた頃、男子浴場の洗浄が終わり、即刻、女子浴場に移行です。

男子浴場は、これから滑り止め溶剤を塗布する作業に入ります。まずは床材のすき間を広げるための溶剤の塗布からです(1次溶剤の塗布作業)。4~5分経過後、床のすき間に残留した物質を溶かすための溶剤の塗布(2次溶剤の塗布)と作業は続きます。

2次作業が終わる頃、女子浴場の洗浄も終わる段取りです。ここまでは予定通り作業は進展しました。

が、次の作業工程で発生するとんでもない出来事で、私は悩み苦闘することになってしまいます。

本当の敵は床の中にあり???

2次溶剤塗布を終え、中和処理に入ります。中和剤を塗布すると同時に、裸足で効果の確認作業にかかります。予定では、この段階において本来バッチリ滑り止め効果を確認できるはずでした。

が、結果は滑り止め施工する前よりヌルヌルの状態となってしまいました。それでも、滑りはそれなりに止まっています。床の中から体脂肪の固まりの一部が飛び出てきたんですね。

前述したと思いますが、床材は結合粒子で形成されていますから、必然的にすき間が発生します。そのすき間の大小と数の編成により吸水性が変化します。全てには当てはまらないとは言え、本来、吸水性高い床材は滑りにくいものです。

先人の知恵というか、十和田石とか伊豆の若草石が昔から浴場の床に使われているのは、そのためだと私は考えています。今回の床材は御影石のバーナー仕上げで、その形状凹凸で滑りを抑制するために敷設されたものです。

滑りを抑制する条件を満たす床が、なぜ危険な状態になったのか?

バーナー仕上げによって凹凸部分面積が大きくなり吸水性も高まります。
では、滑りを抑制する条件を満たしたはずの床が、何故に滑って危険な状態となったのか?

問題点は幾つかありますが、最も大きな要因は体脂肪が温水と一緒に床に吸水され、蓄積し、すき間を埋めてしまった可能性にあります。

体脂肪は動物性油脂、吸水された後、床の中で冷えて固まります。例えるならば、車道におけるハイドロブレーン現象を引き起こす水溜りの原因であるアスファルトの目詰まりと同じと言えます。

当初、バーナー仕上げの床の表面がヌルヌルベタベタしていたのは、体脂肪が既に目詰まり状態で床内に吸収されず、表面に留まり固まった、もしくは、固まったものが溶け出した状態であった訳です。

人差し指でヌルヌルした床を擦ってみると、指先にラード状の油脂がついて来ました。間違いなく体脂肪の固まりが飛び出しています。通常、こんな現象が起きた場合は中和剤を洗い流さず、その上から濃い目のアルカリ性洗剤で洗浄して除去しますが、本当に苦労したのはこれからなんです。

なんじゃこりゃ、さらにヌメリが出てきた・・・なぜだ?!

洗浄を終え、水で洗い流しました。ところが、足の裏には、まだベタツキ感があります。同じ作業を再度繰り返しましたが、僅かですがまだベタツキを感じました。当時、40代でまだ体力に自信があったもんで、一緒に作業を担当した代理店に“もう一回行こか”・・・全員下向いていましたが、もう一回洗浄することにしました。

洗浄後、今度は温水で洗い流してみました。油脂成分であるから、温水を使った方が、より効果的であると考えたからです。かなり疲労感を感じていましたからね。

”ところがどっこいしょ”と来たもんで、ここに来て更にヌメリが出てきて、ガッカリコンコンチキ!!

一旦休憩を入れ、何故こんな現象が起きたのか考える事にしました。

温めりゃ溶けるし、冷えりゃ固まる

一息入れ、ブツブツ一人言を言いながら思案します。

  1. 3回目の洗浄後、温水で洗い流したら床の中から、多量の体脂肪が飛び出してきた???
  2. 滑り止め溶剤の反応作用で結合している床材のすき間が大きくなった???
  3. そこへ洗浄で使った洗剤が入り込み、体脂肪に反応し体脂肪が小さくなった???
  4. またまた温水が入り込んだ事で体脂肪の固まりの周囲が溶けてた???
  5. 体脂肪が溶けて小さくなったから床面に上がってきた???

なんでやろ???

床の中が見えりゃ簡単なんでしょうが、疲れきった脳細胞が明快な答えを出してくれません。とは言え限られた時間内での施工です。15分程の休憩を終え作業再開。

原因は比重の関係だった

若いから?・・・体力が回復すると頭の回転も(口も)滑らかになるもんです。体脂肪が洗浄するたびに床面に出てくるのは、比重の関係が影響していると考えました。いわゆる水と油の関係です。

水が床の大きくなったすき間に目一杯溢れるほど入った影響で、滑り止め施工溶剤で削り落とされた比重の軽い体脂肪が上がってきたんですね、きっと。まして3回目の洗浄で温水を使ったんで更に溶けて上がりやすくなった?と考えました。

4回目の洗浄後、今度は水で洗い流しました。ようやく納得出来るレベルの滑り止めの床が出来上がりました。水で洗った理由は、小さくなった体脂肪を床内に固めて留めるためです。

長い年数、床内に吸収され、床内の至る所で固まった体脂肪は、そう簡単には取り除けません。しかしながら、水通し?は良くなった筈です。水通しが良くなって初めて床がスタッドレス効果を発揮するのです。そしてこの理論こそが“セーフティME工法”なのです。

男子浴場の施工が終了した頃には、もう1つの女子浴場の方は既に中和洗浄を終え、待機状態でした。この間既に3時間費やしていましたので、残り2時間は、男子浴場で学習した内容に基ずき、洗浄を温水で1回、水で1回と連続して実施しました。

効果は十分確認できました。一応これで現場での滑り止め施工は終了となります。

もっとも重要なメンテナンスマニュアル

が、これで全てが終わったんではないのです。むしろ始まりなんです。メンテナンスマニュアルを作成し提出し、以後のメンテナンスの手法とサポートについて話し合いの場をもちます。

現場で発見したこと、応用、対応した出来事は、滑り止めの効果を持続、継続させる為に必要なノウハウとなるからです。必要性にかられ、初めて世間に現場毎、床材毎のメンテナンスマニュアルを作成し提出したのは1998年であったと思います。

現在、類似業者の皆さんも、以降この手法を引用されていることは承知してますが、形式的に1つのマニュアルをコピーし提出している業者が多いようですが残念なことです。

現場には、床材を知り、水を知り、その他もっと多く知りえることがあるはずです。そして、自分の感性を信じ、現場で汗し、現場で学んだ事が、メンテナンス(維時,管理)に生かされるマニュアルとなることを信じてほしいんです。

私もまだ修行中の一人として今後も、皆さんと出来るだけ情報を分かち合えたらいいなと考えています。

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

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