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類似業者さんからのSOS。防滑施工後2ヶ月で滑り出した浴場施設

どちらも被害者???

先週の出来事です。同業者M社の加盟店であるA氏からSOSを受けて、茨城県日立市へ出張してきました。孫のいる年齢になってくるとチトしんどい旅となりましたが、東京からは新弟子がエスコートしてくれましたので、何とか無事に依頼をこなすことができました。

類似業者の施工で、2ヶ月で滑り出した浴場施設

今回のSOSの内容というのが、・・・今年の5月に、日立市でも大手の浴場施設であるNセンターの滑り止め工事を、M社の指導のもと実施したが、7月頃には再び滑り出し、Nセンターから多大なクレームを突きつけられた。

本部であるM社に対し、幾度もアドバイスを求めたが、曖昧な返事が返ってくるだけで一向に改善されない。直接Nセンターに電話でアドバイスする事もなければ、現場チェックのために訪問することもない。

挙句の果てには、保証の関係上か否か分からないが、A氏に2年間、M社の洗剤を無料で提供するってことでNセンターと交渉するよう指示する始末。

本部が頼りないのなら、アナタに弊社が指導するから、アナタがNセンターに行きメンテナンスのチェックをし、改善策を提案しなさいよ。元々アナタが請け負った現場なんだから・・・と私がA氏に言うと、A氏は、「私は素人だからうまく話が出来ないんです。」・・・私は頭が痛くなりましたよ。

それでも"藁にでも縋りたい気持ち”みたいなのがヒシヒシと伝わってきまして、こりゃぁ何とかしてやらんとアカンのかなぁって・・・つい思ってしまうんですよね。

弟子の前田さんと茨城へ

茨城県かぁ・・チト遠いなぁ・・。東京の新弟子の前田さんに「研修を兼ねてA氏のメンバーと現場やってみる?」と打診したら、彼が「喜んで行きます」って言うもんで、A氏のために茨城県のNセンターへ出向くことを決めました。

茨城出張の目的は2つ。

Nセンターの滑り止め補償施工と施工後のメンテナンスの指導です。A氏より注文頂いた《SLIPOUT滑り止め洗剤》で施工を実施する訳ですが・・・午前2時から午前6時の4時間で、約500平米の滑り止め施工です。

素人6名と私の計7名で実施する訳ですが・・・旨くいきますかどうか?

支配人のご立腹はごもっとも

茨城県日立市のNセンターに到着し、SOSの依頼者であるA氏と対面。挨拶を交わすと、直ぐにNセンターの支配人を訪ねました。

事前にA氏から情報を貰ってはいましたが、支配人はかなりご立腹の様子です。開口一番に・・・

ウチは被害者ですよ。
2年以上効果があると言ってたじゃないか。
洗剤は2年間提供して貰いますよ。
呼んでも直ぐに来てくれんし。

・・・と捲くし立てます。A氏は何も言えずうつむいてしまいました。・・・”やれやれこれじゃぁまるっきし、加害者と被害者の関係じゃぁないか”

ご不満はごもっともなこと。支配人は、すぐさまメンテナンスを担当しているB氏を呼んでくれました。2人揃ったところで、A氏に代わり私が、施工後のメンテナンスについて話を伺いました。

なぜ、たった2ヶ月で滑り出したのか?

「支配人、当センターは24時間営業だと聞いていますが、メンテナンスに当てられる時間はどれくらいなんですか??」
と言う私の問いに、「1時間ですが・・・」と支配人。

エッ・・1時間で500平米の床洗浄とカラン廻り全部やってるんですか?

って私が驚いたように言うと・・・「男子風呂5名・女子風呂5名で、計10名体制でやっているので問題はない。」と支配人が答えてくれました。

10名体制かぁ・・・基本的にはそんなもんだなぁ・・・なんて思いつつも、「じゃぁなんで2ヶ月程度で、危険を感じる程滑りだしたんだろう?」って事に疑問が向くわけで、・・・その疑問がB氏とのヒヤリングのなかで明確になってきました。

「ところでBさん、床洗浄の洗剤って何を使ってるんですか?と私が問うと、横から支配人が「塩素を使ってるよ。」と返してきました。

「塩素??」と私が、怪訝な顔で言うと「塩素はアルカリでしょう。」と支配人が又返してきます。・・・(話がだいぶヤバクなってきましたなぁ)

「改めてBさんに聞きますが、他に何か使っていませんか?」と問いかけると、B氏が「ボディシャンプーとか、家庭用の例えばファミリーとかを使ったりしたこともあります。」と答えてくれました。

ボディシャンプー?ファミリー??・・・ナナナンテ事をおっしゃいますか。・・・(そりゃぁ滑り止めを維持できる訳がないわなぁ)

B氏の顔色を見ながら話をしていくうちに・・「其れなりの何か原因が他にあるな?」・・そう感じたので、時間もないからって事でさっそく現場に案内してもらうことにしました。

まず男子浴場に案内されましたが、さすがに250平米ともなると広々としたもんです。タイルはツルツルでよく滑っています。数ヶ月前に滑り止め施工をしたって感じは何処にも見当たりません。

とにかく4時間で500平米の滑り止め施工をA氏が約束している以上、急いで作業に入らないと更なるトラブルとなってしまいます。そこでA氏に施工用具を準備するよう指示しました。・・・すると・・・目の前に準備された施工用具は・・・・目を疑いたくなりましたよ。

バッケットはない、適正な塗布用具もない!

500平米を施工するのに4時間しかない事は、事前に承知のはずのA氏。にもかかわらず、A氏が揃えたメンバーはA氏を含め、たったの3名。しかも溶剤塗布量調整に必要なバッケットもなければ、適正な塗布用具もない。

現場研修を兼ね、東京の新弟子4名を引き連れて来たものの、彼等も施工経験は一度もありません。・・・施工アドバイスに来たつもりが、・・・まさか・・・自ら施工に参加し、指揮棒を振るハメになろうとは・・・。

不幸中の幸いとでも言いますか、東京の連中が真新しい施工用具を一度使ってみたいってんで、たまたま車に積み込んでいたんです。

まるでセーフティの現場みたいになっちゃったなぁ・・・新弟子の連中にとって初めての現場研修ではありますが、なぜか彼等には笑顔があります。・・・初めての奴は怖さをも知らんからなぁ・・・なんて思いながら施工手順の流れを組み立て全員に指示しました。

セーフティの滑り止め溶剤、用具を使い、セーフティの新米を軸に、A氏のメンバーをサブにし、施工をスタートしました。

新米だらけで防滑施工を開始・・・

いやいや驚きました。何と呑み込みの早い新米連中なんでしょうか。せいせいと確実に現場をこなして行ってます。一服することもなく施工は5時半ばに無事終了。ツルツルに滑っていた床は安全な床になりました。

施工が終わりほっと一息したのかA氏が、「さすがにセーフティのメンバーはすごいですね。」って言うもんですから、・・・「何言ってるんですか。彼等は今日初めて道具握ったんですよ。」

氏はエーッって驚いていましたが本当の事です。・・・要は、ちゃんとした道具と床に適した溶剤、そして、ちゃんと指揮棒の振れる知見を備えた指揮官がいれば、何処の業者さんにでも出来ることです。・・・(ちゃんと指揮棒を振れる指揮官が育っていないのが、滑り止め業界の致命的問題点ではありますが・・・)

本題は防滑施工後のメンテンス

さて、私がわざわざ茨城までやって来た理由は他にあります。施工は仕方なくやったまでで、本題は施工後のメンテナンスのアドバイスにあります。

実は、施工の間に幾つかの重要な問題点を発見しました。この問題点を改善しない限り、何度滑り止めを施しても、短い期間でまた滑り出すことになります。

未然に防止できたトラブルだった

トラブルに発展するには必ず其れなりの原因・要因があります。この問題点を指摘し、指導出来なかったA氏とA氏を指導する立場にあるM社に疑念を持たずにはおれません。

未然に防止できたトラブルであったはずです。M社に関しては私も同じ経験をしています。いつまで加盟店に補償施工をやらしてんですかね。前回書きましたが、2年間の洗剤提供くらいはA氏との約束です。ちゃんと実行してほしいものです。

その重要な問題点と提案とは・・・。

滑りのトラブルの原因はなんだったのか?

水の出が悪かった・・・

施工の間に出てきた最も重要な問題点と言うのは、”水”の出が非常に悪いことです。そこへもって施工する前に、支配人から風呂の湯を使わないようにと指示されてはいましたが・・・目の前に水(湯)がたっぷりとプールされているんですから指示を無視し、”思いっきり使わせてもらいましたよ。”

シャンプーを使って頭や体を洗う時のすすぎ洗いは、十分な水を必要としませんか?シャンプーも洗剤と違いますか?頭や体に洗剤を残したままにすると疾患がおきますよ。

なぜ、洗剤に塩素をつかっていたのか?

十分に水が使えない。メンテナンスを担当するB氏の苦悩がそこにあったんですね。・・・滑り止め施工後、わずか2ヶ月程度で床がツルツルになった理由はハッキリとしました。

メンテナンス担当者のB氏は、水の出が悪い事がメンテナンスに支障をきたしていることを承知していました。それ故に、出来るだけ泡のでない洗剤を使うしかないってことで、”塩素(次亜塩素酸ナトリウム)”を日常的に使ってきたみたいです。

冒頭に支配人が「塩素はアルカリでしょ。だから使っているんだけど。」って私に言った意味が理解できました。・・・(゚0゚)

内藤の独り言

ダメダコリャァ・・・塩素ってのはね支配人。殺菌作用と漂白作用はあっても洗浄能力はありませんよ。テレビのCMで”泡切れの良いファミリー”って言ってたからって、・・・・使ってみたんですよね。気持ちは分かりますが・・・チョッとねー。適正な洗剤とは言えませんよ。

それよりまず水、水ですよ。

せっかく新車(滑り止め)を買ったのにガソリン(洗剤と水)がなければ、何の役にも立たないでしょ。24時間の営業方針を変えろとは言いません。メンテナンスの時間が1時間しかなければ尚更の事です。十分な水をどう調達するか、現状でやるしかなければ水を補填するコストの掛かる何かが必要なんですよ。

もうお分かりでしょうが、滑り出したのは、施工した業者の責任だけではないんですよ。説明不足はあったにせよ、十分に水が使える状態であったなら、状況は変わっていたかも知れないと言うことです。

滑りは病気

表現が適正であるか否か分かりませんが、滑っている床は、滑りと言う病気で瀕しの患者なんです。滑り止め施工者は言わば”スリップドクター”であり、以降のメンテナンスを担当する者は、手術後の患者の健康状態を管理する”ナース”であるべきです。

ドクターは、患者の為に適正な薬(適正な洗剤)と処方箋(使用法))をナースに指示し、ナースはドクターの指示のもと、患者の日常の健康状態が正常であるか否かチェックし見守ります。

患者に変化が生じればドクターに連絡し、対策を十分に話し合い患者を正常へと導きます。この流れがルール化されないと”安心・安全”は保てないのです。

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

  1. 園田 より:

    統括の独り言の例え(スリップドクター)なんぞは読みながら思いっきり頷いてしまいました。なんとも分かりやすい!

    先日、どう見たって雨の日はツルツルだろ~なぁと思われる、とあるマンションのエントランスに遭遇しました。そこにいた小学生に聞いてみると、やはりツルツルだと言う。早速管理業者に問い合わせをしてみると転倒事故や直接苦情がない限り何も施せないと・・・。
    え~~~っ、そんなんでええの?!。
    代わりに床の汚れ問題を投げかけられました。
    結局は見た目重視かいな!
    女子高生やおまへんやろ、見た目より安心・安全でっせ(^^)/

    • 内藤 憲道 内藤 憲道 より:

      園田さんへ
      ホンマに見た目を優先する施設って多いよね。そやから国は、コンプライアンスに関する縛りを強化して、意識の改善をさせようとしているんですよ。大手企業においては、取締役会の次にコンプライアンス委員会を位置づけています。大手言えどもコンプライアンスに反する出来事で、上場を取り消されるケースがあるからです。

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