SUBERANAI BLOG すべらないブログ

13年前に防滑施工した市民プールの再施工

「滑る・汚い・臭う」がそろった市民プール

兵庫県川西市の教育委員会から市民プールの滑り止め施工の打診を受けたのは、確か平成11年の5月であったと思います。・・・当時現調のため現場に赴いた時の私の印象と言えば、「滑る・汚い・臭う」の3要素全てがそこに揃っていましたね。

なかでも圧巻だったのは、プールサイドの至る所に白い粉状のものが点在していたので、施設担当者に「あれは何か?」と訊ねると、返ってきた返事が「あれは塩素です。」

・・・これには驚きましたね。
要するにアルカリ成分で洗うように指示されていたので塩素を使っていると言うのです。・・・確かに塩素はアルカリ成分ではありますが体脂肪を乳化させる能力はありません。・・・しかも約340平米のタイル表面の30%は、石化した汚れで黒ずんでいます。

施設スタッフによる防滑メンテナンスをどうするか?

当時も現在もそうですが、この市民プールのメンテナンスは施設のスタッフによって実行されています。メンテナンスのプロ的な人材は1人として存在しません。滑り止め施工をするにしても石化した汚れをある程度は除去する必要がありますし、防滑効果を維持させるためにはメンテナンスを理解し得る人材を育てる必要があります。・・・さてさてどうしたものか正直悩みましたね。

悩んでいるうちに川西市の方から施工決定の連絡が入ってきました。ある意味「腹をくくって」打ち合わせのために市民プールへ赴きました。

施工日、施工時間帯等々、淡々と話は進み難題のメンテナンスへと入っていきます。

『ところでメンテナンスの事なんですが』・・・担当者は神妙な顔で私に問いかけてきました。

『ちゃんと指導をさせてはいただきますが、その前に今、メンテナンスをどうされているのか教えてください。』

私は滑る・汚い・臭うの3点がどうして発生したのか知りたかったのです。すると担当者は制約された予算の関係からスタッフで床の洗浄をする選択をした経緯から、落ちない汚れにメンテナンスの難しさを痛感している事等、率直に答えてくれました。

そして彼は『お願いします。教えてください。』と業者である私に頭を下げるんです。なんと謙虚な人なんでしょうね。・・・

まぁ何と言うか、そこまでされたら九州男児の男気をくすぶられますよ。・・・と言う訳で、今回の施工は滑り止め以外の作業が大勢を占める事になりました。

石化し黒ずんだ汚れ除去対策の為に日程の調整をお願いし、ついでに施工後のメンテナンスについてスタッフが理解し易い内容まとめてマニュアル化してあげる事にしました。・・・実はこれが現在のセーフティ流メンテナンスマニュアルの先駆けとなったのです。

大阪セーフティのスペシャルバージョン施工

さて施工当日となりました。通常の倍の頭数10名で対応する事にし、ポリッシャー3台(黒パット使用)と高圧洗浄機1台も準備しました。施工溶剤は石化した汚れに対応可能とする為に、ああだ、こうだと考えながら作り上げたセーフティのスペシャルバージョン(現在のSP2レベル)を準備。更に事前洗浄用として石化した汚れを軟化させる溶剤(???)を試しに別途作ってみましたが・・・さて?どうなることやら・・・(^-^;

事前洗浄がポイント

事前洗浄を徹底するのが今回私の主テーマでもあるので、全員フル稼働で洗浄にあたりました。しかしながら思うように石化した汚れは落ちてくれません。用意した黒パットが1枚2枚とすり減っていきます。早朝8時から作業を始めて、6枚準備した黒パットを全て使い切った頃には、12時を少し回っていたと思います。

今思えば、ぶっ通しで4時間もかけてタイルの洗浄をしたのは後にも先にもこの現場だけです。・・・で・どうなったかって言うと、50%は完璧に除去出来ましたが、他は残念ながら・・・残留させてしまいました。言い訳にしかなりませんが、滑り止め施工に入れるレベルにはなっています。

滑り止め施工へ

午後、滑り止め施工に入りました。ここで私が思ったのは、滑り止め溶剤の反応性で残留した部分が少し減ってくれるのではないかって事です。期待しながら滑り止め溶剤を塗り始めました。塗布量は通常より多めにし、擦るように塗布していきました。全て塗り終えた時は腕がパンパンでしたよ。そして再度ポリッシャーを時間をかけゆっくりと回していきました。

防滑効果の確認を済ませ、中和洗浄の為再度ポリッシャーをかけていきました。メンバーは全員無言のまま済々と作業に取り組んでいます。・・・『今日は何回ポリッシャーかけとるんやろ』・・・誰もが思っていたと思います。

少し残念な施工結果だったが・・・

17時に作業終了となり施設の担当者の確認を受けます。担当者は満面の笑顔を見せ喜んでくれました・・・が、実は黒ずんだ汚れはまだ残っているのです。施工においては最善を尽くしましたが・・・残念でなりません。しかしながら担当者は・・・『ここまで綺麗にしていただいて感謝します。』・・・本当に謙虚な人ですよね。

滑り止め施工の終了はメンテナンスの始まりでもあります。その後、月1回の施設の休館日に合わせて、施設担当者に依頼されたメンテナンスの手法を担当者が理解しやすい内容にし、その内容を基本に現場でのレクチャーを数回実施しました。

あれから12年・・・再施工の依頼

あれから12年も月日が流れ、施設の担当者も何人か代わられたようです。突然の再施工依頼の電話に懐かしさもあって嬉しかったですね。久しぶりに調査のため施設を訪れました。早速プールサイドに足を走らせました。・・・あの時苦労したタイルがどう変化したのか早く見たいと思ったんです。・・『また汚れとるんかなぁ』・・そう思いながらドアを開けました。

滑りは非常事態になっていたが・・・

ドアを開けると意外にも出入口付近のタイルに黒づんだ汚れがありません。さすがに滑りに関しては・・・非常事態に近いレベルに・・・なっていました。

でも、嬉しかったですよ。12年もの間、市民プールのスタッフが当時のメンテナンスマニュアルに準じて真剣に取り組んでくれた結果ですからね。その間メンテナンス業者に依頼したことは一度もないとの事。

扱った事もないポリッシャーを買い求め、館長以下全員が練習し、現在は館長も含め全員が自由自在に操作出来るそうで、日替わりでメンテナンスに当たっているそうです。

民間の施設でも、ここまではやれんでしょうナ。

13年目の再施工はある意味テンポ良く終了に至りました。

改めて当施設のためにメンテナンスマニュアルを作成する訳ですが、次は目標として15年間防滑性能を維持させる為にどうするか・・をテーマとして考えました。

弊社のSLIPOUT滑り止め洗剤2缶と作業する為の小道具を提供し、都合のつく休館日にスタッフの皆さんと合同でメンテナンスマニュアルにしたがって作業をする事にしました。やり方を示せばキッチリとやってくれる皆さんですからね。感謝の気持ちを込めて、ほんの少しだけサービスさせていただきました。・・・(o^-^o)

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

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