スケート場と化した厨房の床???
タイトルを見て、そんなオーバーな?と思われるでしょうが、私自身、多くの現場で何度も尻餅ついて痛い目にあっています。もちろん滑り止めの施工現場ですから、現調時の出来ごとです。滑りの状態をチェックするために普通に歩いたり、急ぎ足で歩いたり、急に回転したりといろいろやるんですが、そのほとんどでズッコケました。
アンタ足腰弱いのんとちゃう?ナンチャッテ云わせませんよ。手前味噌ですが、昔はバレーボールのエースとして全日本選手権に何度も出場した(確か新日鉄と対戦したこともあったな)こともあります。鍛えてますよ。
まあそういうことで、とにかくよく滑りますし汚れています。滑りを発生させる原因は多くありますが、大別して敷設されている床材と、日常のメンテナンスの2点に絞って記していきたいと思います。
厨房に使われる強化モルタルの特性
厨房といっても業種によってさまざまです。以前は、強化モルタル床(ハセップ等)が主流でしたが、近年は、劣化の問題や保健衛生上の保守管理が難しいと言うことで、タイルを敷設する施設が増加しているようです。
しかしながら、油汚れは厨房には付き物ですから、ほとんどの現場担当者は滑り対策で苦労されているようです。厨房に使用される強化モルタルは、スランプ(モルタルの密度の規格)が高レベルのもので吸水性が極端に小さくなります。吸水性の小さい床に、油脂を含んだ汚れが付着すると滑りは発生しやすくなります。
それならばと几帳面な現場担当者が、日々洗剤を使いデッキブラシでゴシゴシ。油は水よりお湯の方が落ちやすいってんで、丹念にお湯で洗い流します。なるほど洗浄手法として理に適っていますし、事実私もそうします。
ですが、先々この作業が原因でさらに大きな汚れと、場合によっては滑りで悩むことになります。強化モルタル床の宿命的な弱点が悩みをもたらすことになるのです。
強化モルタル床の宿命的な弱点
強化モルタルにはスランプという規格があります。モルタルの密度を高めるためにモルタルに樹脂(ポリマー)を混入します。強化するといってもモルタルを硬くするのとは違います。保健衛生上、雑菌がモルタルに入りにくくするために考えられたことです。
強化モルタルを敷設すると、当然ながら吸水性は極端に低下します。吸水性の低い床に、油脂成分が付着残留し、蓄積されてくると滑りが発生してきます。どこの施設担当者も同じだと思いますが、油汚れを除去するために日々努力されておられるはずです。洗剤を使い、デッキブラシでゴシゴシ、そして水やお湯で洗い流す。
前置きはこれくらいにして本題にいきましょうね。
モルタルは成分の関係上、少しづつ水に侵食されていきます。ましてや、自分自身が働く聖域ですから皆さん懸命に洗浄されています。すると徐々に侵食が進み、又お湯を流したりするもんですから更に侵食されて、スランプ基準を充たした強化モルタルの床も、やがては吸水性が大きくなってしまうんです。クラックが発生する場合もあります。反面、吸水性が大きくなったおかげで床は、滑りにくくなります。
そして、1~2年も経過した頃の床は、見た目でハッキリと判るほど、凹凸が出来てきます。これが云わば強化モルタルの弱点なんですね。
エッ!初めに厨房の床は、よく滑るって書いていたじゃないかって?
そうでしたね。
実は、それは油汚れの除去清掃が上手くできていない施設のことです。吸水性が大きくなると油汚れもその分床内に吸収され蓄積します。
ってことことは、汚れやすくなるの?
その通りです。
そして清掃がおろそかになると滑りで危険がせまり、経年すればするほど、清掃作業はシンドイものと化します。これも強化モルタルの成せる業だと言えます。
磁器タイルに油汚れが定着すると・・・
厨房の強化モルタルについて簡単に記しましたので、磁器タイルの場合はどうなのか記してみたいと思います。
強化モルタルとは違い、磁器タイルは多種多様のものが敷設されています。その大半は滑り対策上、表面に凹凸が施されています。摩擦抵抗で滑りを抑制しようと考えてのことだと思います。
某ファーストフーズの磁器タイル
1つだけ例を挙げてみます。有名な某ファーストフーズの磁器タイルは、摩擦抵抗を高めるという視点においては、よく考えられたものです。細かな凹凸があり、吸水性も高いものです。吸水性の高い床が滑りにくいことを知ってのことだと評価できます。
ただ、残念なのは、その設計者がメンテナンスに精通していないことです。厨房の現場では、頭脳で考えられた優秀なアイデアも、役に立たないことが多いのです。
途切れることのない多くの利用客、驚くほどの揚げ物の数量、それに伴う深夜にも及ぶ営業時間、営業終了後、従業員は黙々と後かたずけと翌日の準備に取り掛かります。大量に床に飛散した油は、指定されたアルカリ性洗剤を希釈し、簡単にモップで拭き取っています。キッチリ床を洗う時間がないのです。
これでは試行錯誤し“これならいける”とされ敷設された床も悲鳴をあげてしまいます。そして凹凸も吸水性も安全面において何ら寄与することなく、反対に汚れと滑りを誘発させるための促進剤と化しているのです。“スケート場”と表現したのはオ-バーだとしても、近いものはあります。
某ファーストフーズだけを特定している訳ではありません。いずれのファーストフーズも同じ悩みを抱えています。相談があれば、即座に解決できる手法があるんですがね。この件は、これ以上書くと”資本主義のいやらしさ”に発展しかねないのでこの程度に。
洗浄方法は強化モルタルの場合と同様でいいと思います。アルカリ性洗剤を使いデッキブラシでゴシゴシ擦り、水かお湯で洗い流します。強化モルタルは経年すると凹凸になってくると先述しましたね。
厨房のタイルはどうなるか?所々浮いて剥がれやすくなります。原因は、常に水がタイル床下に滞留するからなんですね。メンテナンス業者の方ならよく見かけられると思います。所々張りかえられているタイルを・・・。