SUBERANAI BLOG すべらないブログ

NEXCO 高速道路PAの防滑工事

石化した汚れを除去せよ

3年前の名神高速道路のSA・PA各所の滑り止め施工現場での出来事です。最初のSAの現場は、化粧板に近い釉薬テカテカのタイルで、施工溶剤の配合調整のみでスムーズに施工を終えました。

一部に珪酸化した汚れが点在してはいましたが、別途用意しておいた施工溶剤で除去することが出来たので他の現場も、”こんなんでいけるんとチャウ”なんて乗りで考えていました。

本来、滑り止めの施工依頼を受けると、現地調査とデモ施工を実施するのが基本となります。今回も当然ながら滑り止めのデモ施工まで終了。そして各現場毎の施工溶剤を調整し準備しました。

ところが、この程度で何とかなると思い込んで準備した事が以降、思わぬ展開を招くことになってしまいます。

防滑施工時に同時に除去できる汚れが、ほとんど反応しない・・・

過去の経験を基に準備した施工溶剤でしたが、タイルには反応しても石化した汚れにはほとんど反応しません。滑り止め施工溶剤にはフッ化物を混合させているので、通常の汚れは滑り止め施工時に同時に除去できるものですが、今回に限っては何の効果もありませんでした。

珪酸化し、石化したこげ茶色の汚れが施工後かなり目立って残留しています。たまたま工期を3日間にしていたので対策を打つ時間はありましたが、緊急事態となり困惑してしまいました。

初日の施工を終え、事務所に戻り2日目の対策検討に入りました。フッ酸(フッ化水素酸)を使えば比較的簡単に除去できるのは承知してはいましたが、毒性が強すぎて後の処置を考えると使いたくないし、他に活路を見つけるしかありません。

基本的な発想としては、フッ化アンモニウム(中性)を発展的に、かつ安全に活用した洗剤を緊急に準備することです。さっそく徹夜覚悟で作業に取り掛かりました。

汚れのサンプルがないため、溶剤を調合できない状況

手元に対応すべき汚れの一片でもあれば、反応性を確認しつつ対応すべき溶液を調整調合できるのですが、残念ながら現場で削り取ることさえ出来なかったので、私の感覚と過去の記憶との戦いとなりました。

無機酸、有機酸にフッ化アンモニウムを混入させていく訳ですが、ただフッ化物の反応性を高めるだけでは駄目なんです。珪酸化した汚れが落ちた後の床の表面状態を必要以上に変化させては意味がありません。

過去の記録と記憶をたどりながらゴソゴソと・・・なんとか出来上がりました。汚れが落ちるか否かは神頼み?とにかく明日にそなえ、チョッとだけ眠ることにしました。

神頼みの結果は・・・?

さて現場で試す事になりましたが、一抹の不安はあります。いつも何かを試す時は同じ気分ですが・・・ドキドキしますよ。

落ちました。きれいに落ちましたよ。床の表面状態も殆ど変化してません。40リットル持参した溶液のほとんどを使い切り、すべての石化した汚れを除去し作業は完了しました。

滑り止め施工はNEXCOさんより、3日の日程を申し渡されていましたが、基本的に本日終了とし、残り1日はチェックの日としました。

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

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