湯布院 有名旅館の滑り止め施工
さすがに良い石使ってますね
先日、大変お世話になっている大分のゼネコン様からの依頼を受け、湯布院の有名な某旅館の滑り止め施工に出向きました。
通常の洗浄では除去困難な自然石
受注したのは、大分に配する西日本本部(STA)です。私が出向かざるを得なくなったのは、長年に及ぶ樹液が、敷設されている自然石に付着し吸い込まれ、石化した状態にあり、通常の洗浄では除去が困難であると営業担当の園田からの報告を受けてのことです。
更に旅館の横手に小さな河川があり、ウグイをはじめ川魚が多く生息している環境であるとのこと。経験とノウハウを求められる現場ですので、老体にムチを入れ車で走ってきました。
園田の事前現調報告を信じ、写真を何度も見返しては洗浄液、施工溶剤の選択と排水方法等について検討に入ります。
弊社の多くの施工例の中に同様な現場が幾つかありますが、施工終了後に魚が腹を見せプカプカ浮いてきたんでは洒落にならんので慎重になってしまいます。
そこで過去、奈良県の御所町の現場で培った手法を用いることにしました。施工排水が農業用水に流れるってんで、役所の担当者が施工の開始から終了まで立ち会って細かいチェックを繰り返した現場です。
苦労しましたが、無事完了しホットした経験があります。その時に使用した洗浄液と施工溶剤を(洗浄液は2年前に製造し熟成させた比重1.18の酸性溶液)を積み込んで行くことにしました。
写真で見た自然石の表情は全面グレー色で統一された状態でしたが、湯布院の現場で見る自然石は殆ど黒?のレベルに達しています。さっそく養生作業に取り掛かり洗浄、施工と工程は進んで行きますが、・・・・さてさてどんな顔の石が出てくることやら・・・・・・。
1年寝かせたオリジナルの洗剤
養生を終え、石の洗浄に取り掛かりますが、その前に先に適量の5パーセント程度の重炭酸ナトリウム水溶液(中和剤)を準備し備えます。
今回洗浄のために使用する液剤は比重1,18で、PH1レベルのものです。数種の有機酸に一定のフッ化物を反応させ安定させて、更に無機酸を一定量加え、1年以上寝かせることで、無機酸が有機酸を其れなりに分解し、使用後、中和をキッチリ実行することで、ほとんど環境に影響のない洗浄液が出来上がるんです。
これが本当によく汚れが落ちるんですよ。(企業秘密部分ですのでこの程度の紹介で完。一般販売はしておりません。)
どす黒い樹液の海に
洗浄液を擦るようにして石に塗布していきます。50平米程の小さい現場ですが、自然石ゆえ全てに凹凸があり、塗り終えた後かなり疲労感を感じました。石の吸水性が高く、予定量の2倍近く洗浄液を使うことに・・・・・。
10分程度放置していると、石から樹液が染み出て来たのか石の表面がどす黒く光ってきました。ここぞとばかりにデッキブラシでゴシゴシ(凹凸が大きすぎてポリッシャー使えず。)
擦って行くと、ドロっとした樹液がドンドン出てきます。更に滑り止め溶剤を塗布しデッキブラシでゴシゴシやっていたら石の地肌が出てきました。時間をかけゆっくりと擦って行く度に深みのある赤色が浮かび上がってきます。
擦り終え、先に用意しておいた重炭酸ナトリウムの水溶液を一気に散布すると、石の中に染み込んでいた洗浄液、施工溶剤と中和反応し、気泡と共に樹液も飛び出してきて、床一面ドス黒い樹液の海と化しました。
更に2パーセント程度の重炭酸ナトリウムを散布し、石を擦り上げ・・・終了となりました。
「忘れていました。こんな色だった、こんな色だった。」
旅館の女将さんも、興味深げにたびたび現場へお出でになっては様子を伺っておられましたが、施工完了後の石を見て・・・
忘れていました。こんな色だった、こんな色だった。
そう言って大変喜んでくれました。
失礼ですが女将さん、洋画家の青木繁をご存知でしょうか。
私は彼の絵に描かれている深みのある赤い色が好きなんですが、こちらの石の色は彼の色です。
さすがに良い石使われていますね。お蔭様で今日は良い思い出になる仕事ができました。本当に有難う御座いました。
自然に囲まれ、決して大きいとは言えないが風情漂う旅館です。澄み切った空気の中で、自然と旅館が共存しているような"命永らえる”安らぎを覚える湯布院・・・でした。