テラコッタタイルが真っ白け???滑り止め現場でのトラブル
真の犯人(ホシ)は???
昨日の出来事です。私の親愛なる弟子の一人(代理店テック・グランドアップの上園社長)から電話が入りました。滑り止め施工の現場からとのこと。現場から電話が入る時は、何かトラブルが発生した場合が多いんです。
テラコッタタイルが真っ白けになってしまった。
いつも冷静な彼が電話越しに慌てている様子が伺えました。勉強家で感性豊かな彼が現場で使う施工溶剤を間違えるはずもなく、不思議に思いつつも、取り合えず真っ白けになったタイルの写真をメールするよう指示しました。
しばらくしてメールが届きました。メールを見ると、そりゃもう見事に真っ白けになったテラコッタ風タイルの写真が届いていました。
届いた写真を見ながら電話で上園社長の話を聞く事にしました。
「びっくりしたぁ」・・と言う第一声から始まり・・・「こんなん初めてですわ」・・・そりゃそうでしょうね。
私も滑り止め溶剤の開発を含め15年余り滑り止めに関わってきましたが、こんなに真っ白けに変色したタイルを見るのは初めてなんですから。
なぜテラコッタは真っ白けになったのか?
「溶剤は何を使ったの?」と尋ねたら「当然テラコッタ専用溶剤です」・・・それなら100歩譲っても?真っ白けになんかなり得ません。
不思議な事もあるもんだと思っていたら、上園社長が・・
真っ白けになったのと同じタイルがスロープ部分に新設されていて、
そこも専用溶剤を塗布したんだけど、
いつも通り変色もせず、滑りはキッチリ止まったんですよ。
・・・そこで不思議から不審に気持ちが変わった上園社長は、仕事の依頼先である某設計事務所に尋ねました。
「以前に何処かの業者で滑り止め施工やってませんか?」・・・設計事務所の返事は「3年程前に他の業者で滑り止め施工をやっています。」・・・・アレレのレ・・・。何やら怪しくなってきました。
そりゃぁ白くなるわな
テラコッタタイルは、汚れて風情のでる特性を持つ面白いタイルだと思います。分譲マンション等で多用されていますが、柔らかく、暖かい趣きのあるタイルです。・・・3年前、おそらくそのタイルが真っ白けになっていたんでしょう。
基本的に滑り止め施工溶剤は、現場に敷設されているタイル毎に調整する必要があります。調整とは、水で数倍希釈し使うことではありません。施工溶剤の配合調整を意味します。
従って、施工溶剤を提供するメーカー側は、それなりにタイルを含む床材の組成、成分を熟知する必要があります。そして最も重要な事は、施工溶剤を使う側と、製造する側との事前のコミュニケーションであると思います。
コミュニケーションとは、
- 床材が何であるのか
- 施工周辺の環境状況
- ユーザーのニーズが何であるのか
等を事前に打ち合わせする事を意味します。
いい時代になったものです。全国の何処の業者さんであっても、電話とメールで写真を送ってもらえば、いろんなやり取りが出来るんですから。
ただし、手前味噌ですが過去十数年間、現場の床材毎、施工溶剤を調整製造し、自ら現場で施工し、確認してきた弊社だから出来るんだろうと内藤的には思っています。(・∀・)ニヤニヤヾ(´ε`*)ゝ エヘヘ
真犯人は、施工溶剤の成分だった
話を元に戻しましょうか。テラコッタタイルが真っ白けになった原因は、施工溶剤の成分にあります。テラコッタタイルは一見無釉薬に見えますが、前述した様に、その特性を活かすためとメンテナンスを思慮し、適量の釉薬が施されています。
溶剤を使った滑り止めの原理は、タイル成分の7割強を占める成分シリカを、一部反応させ隙間を形成させることです。シリカを床材毎にどう反応させるか、そのために溶剤の配合調整をするのが、技術である訳です。
従って、それなりに相当の床材に精通したメーカーでなければ無理、難解な部分がそこにあります。・・・ではシリカを反応させるために必要な溶剤の成分配合とは・・・。
シリカを反応させるために必要な溶剤の成分配合とは
思い出してください。タイル(焼き物)や石が割れた時、割れた箇所が白っぽくなっていると思います。それがシリカ(石英)なんです。
必要以上、無機床材の表面上の隙間を広げ過ぎると床材は、極論ですが割れた時と似たような現象を起こし、白っぽくなってしままうんです。
昔々、私が溶剤の開発に踏み切った原因の一つでもあります。当時の私は、アメリカからOEMでこの滑り止めを導入したH社の第1号の1加盟店として活動していました。
浴場の滑り止めに関しては、メンテナンス以外、何の問題もありませんでしたが、マンションのエントランス等の施工で黒い床をグレーに、真っ赤なインペリアルレッド(通称赤御影)をピンク色にしてしまったり、悩み多き時代を経験してきました(保証の関係で数回大きなロスを出しました。本部であるH社は、知見が無いので逃げてばかり、大変悔しい思いをしました)。
”ただ滑りが止まればいい”と言ったアメリカ方式は、感性豊かな日本人には、ストレートには受け入れて貰えません。滑り止め施工後の細かなメンテナンス、履物による滑りの変化、多種多様の床材と反応させるための薬品のメカニズム等、すべてをイロハから学ぶ事を強いられた時代に、実は私も真っ白けを経験しています。
溶剤開発を進めて経験したこと
自分自身を守るため、自ら開発することを決意した当時、薬品の配合調整を一回すると、約15種類の床材にテストしていました。何回も何回も日々繰り返す訳ですから膨大な量の床材を潰してきました。
その中でのことです。二度焼きしたS社のタイルにテストをすると、一般のタイルでテスト成功した溶剤では滑りが止まらないんです。何回塗布しても駄目なんで思い切って塩酸を10%以上に増やし、その他の薬品も其々約3%増加させてテストしました。
そうするとフッ化物の反応性が高くなって、シリカに強く反応すると簡単に考えたからです。その結果、そのタイルは真っ白けになりましたが、滑りは思うように止まりませんでした。実は、この種のタイルの滑りを止めるメカニズムは以前にブログで一部ご紹介したように、別もんなんです。
溶剤は強弱ではない
類似の業者さんの中には、滑り止め溶剤を強く、弱くと表現されているようですが、その思考で作られた溶剤で施工となると、過って私が失敗した真っ白けを繰り返すことになりかねません。
真犯人が想定できたと思いますが、以前に施工された業者さんだけが悪いんではないと思います。施工のサポートが出来なかったメーカーにも大きな責任があるのです。