SUBERANAI BLOG すべらないブログ

滑り止めの再施工は必要なのか?

16年間この仕事やってますと、再施工のご依頼を賜ることも多くなります。お客様は2度目だから「安くしてね」・・・。もちろん任せてくださいって言うのが一般的なんですが、単純にOKを出せないケースも多々あります。

そのためにセーフティグループとしては再施工の価格設定についてある一定の基準を設けています。基準としている根拠等を今回はその一環としてご紹介したいと思います。

滑り止め効果維持のバラつき

過去の経緯に照らすと再施工に至る経過年数は2~13年と大きなバラツキがあります。再施工をご依頼されるお客様の一般的なご意見は、2年しか持たなかった・・10年も持った・・等となりまして、我々の施工に対する様々な評価がそこに反映されているようです。

そこで重要視するのは2年~13年にも及ぶバラツキが発生するのは何故かってことです。

  • ウチは浴場だから・・・
  • プールサイドだから・・・
  • 毎日油が飛散する厨房だから・・・
  • この通路は毎日20万人以上の歩行があるから・・・
  • 磨きの床だから・・・

などなど、ほとんどの皆さんが早く滑り出した要因らしき事を口にされます。

さらに最悪なのは「やはりこの手の滑り止めは長くはもたんしアカンな」・・・そう言うお客様のお話に16年間耐えに耐え抜いてきた私ではありますが・・・この数年チョイと反撃?に転じております。・・・実はこれが凄く効果的でしてね。各施設のメンテナンスの改善に役立っているようです。

浴場・プール施設編

一日1,500名以上の入浴者を数えるスーパー銭湯で、2年間防滑性能を維持するのは至難の技だと言われます。事実弊社が施工させてもらった多くのスーパー銭湯でも2年間以上安全レベルをキープされている施設はさほど多くはありません。

それでも最近はSLIPOUT滑り止め洗剤を戦略的に販売強化した影響もあってか、最近徐々にではありますが意識して安全レベルをキープして行こうとする浴場施設が増えつつあるのは喜ばしいことです。

6年間、防滑の安全レベルをキープするスーパー銭湯

その中でも6年間安全レベルをキープされている、東京にある某スーパー銭湯をご紹介したいと思います。

当施設は入浴利用者が1日3,000人を超える日も多々あると聞いています。・・・実はこの様にしっかり安全管理の出来ている施設のメンテナンス手法と、月間のコスト等をお話することが私の言う反撃材料でありまして。今のところこれが良い形で役立っているようです。・・・某スーパー銭湯メンテナンスの基本は弊社のマニュアルに準じて実施されています。

日常洗浄に月1回の休館日における定期洗浄がローテーション化されています。メンテ責任者には過去何回となくアドバイスしてきましたし、責任者ご自身も随分勉強されたように聞いています。・・・

  • 体脂肪は酸化し床内で滞留し固まる・・・
  • ウチの温泉はナトリウムイオンと塩素イオンが多いから、月1で酸系の洗浄が必要・・・
  • 入浴者が多かった日はアルカリ洗剤の濃度(PH調整)を上げる・・・

などなど。

実はこの施設、トップ管理者もこの程度の知識をお持ちでして、

費用対効果は常に考えている。管理責任者として先の効率化に活かす為にも現場の事知らないとね。

とサラリとおっしゃいました。

残念ながら、関西ではまだこのようなトップ管理者に遭遇しておりませんが、メンテ責任者には優秀な人材が結構いらっしゃいます。浴場施設にプール施設、いわゆる洗浄すべき体脂肪と水、または温泉と床、そして洗剤との関係を勉強している人材が増えてきたことは実に喜ばしい事です。

知識を蓄えメンテナンスのガイドラインに沿えば、防滑効果は長く持つ

アルカリ洗剤と滑り止め洗剤(酸性)・・・体脂肪と温泉成分等が最も滞留しやすい箇所・・・歩行の導線となる部分・・・などなど、理解が深まれば深まるほど床の安全レベルは向上します。そして限界はあるとしてもメンテコストも削減に繋がるのです。

従って某スーパー銭湯の場合、再施工の必要性が見出せません。現場の情報はメンテ責任者と弊社において常に共有していますから、何かイレギュラーがあれば即連絡が入りますし、弊社も即対応する。洗剤を買ってもらっている関係上無料を基本として考えていますが・・・まぁ安全優先ですわナ。

弊社の施工先でもメンテナンスマニュアルを活かさず、施設独自の方針、または業者一任でメンテナンスされる施設が相当数あります。再施工の場合、材料費は安くなりますが実施する作業内容は同じですから其れなりの料金は頂いております。

セラミックタイル本磨きの床 編

セラミックタイル

平成11年にエジプトタイル(今はセラミックタイルと呼んでいる)の磨きに、光沢95%以上を維持したまま滑りを止める・・・なんて言う溶剤を開発した当時、名古屋のタイル協会がびっくりしてましたね。ASTMで41・42なんて数字がでたもので、当時の所長から『何ですかこれは?』って電話を頂いた事を思い出します。

・・・自慢話みたいでゴメンナサイ。・・・
でもね、当時の私はこのエジプトタイルが近い将来、スーパー等集客施設で頻繁に使われるようになることを確信していました。そうなると後退していく物がPタイルとワックス関係かなって思っていました。

少なからず現状を見回すと近いものを感じます。そしてその背景となっているのが、清潔感の演出を兼ねた美観維持とメンテナンスにおけるランニングコストの軽減でしょうか。ついでに床も滑らんとなれば言うこと無しって事ですワ。

ところが世の中そうは甘くはない

綺麗なものはいつまでも綺麗でなければ許されない「俗世特有?の思考」が、床を安全にすることより遥か上にありまして。我々の前に大きな壁をつくってしまうのです。タイルメーカーも相変わらず大変みたいですナ。

『汚れにくいと言ってたのに何で汚れるんや』・・もう無茶苦茶ですワ。私に言わせれば『汚れにくいのにわざわざ汚れを付けて何言うとんねん』・・ってな事になりますが・・・ああアカン。又テーマから脱線してしもうた・・・そやけどね。ここらへんの事を書いとかんと文章の構成がうまくいかんので許してください。

Pタイルのメンテナンスとして代表されるのが、ワックス掛けです。少なくとも従来型は月1回剥離し、改めてワックスを塗る訳ですから毎月綺麗にはなります。・・・剥離作業が不要で洗浄のみで乾燥後、重ね塗りが出来る微粒子入りの硬化型樹脂ワックスも滑り止めに効果的ではあります。

問題はその耐久性とランニングコストにあります。後者の方は年1・2回のメンテナンスで済む事が通常ですから、コンビニエンスストアあたりでよく利用されているようです。

マイクロファイバーモップの使い方

さて本題に入ります。

施工後のセラミックタイルのメンテナンスにおいて、弊社が通常お勧めする手法は、乾式がメインとなります。その中にあって、従来型のモップ使用は止めていただいております。

『慣れてんのにナンデヤネン』・・・まず皆さんそう言われますね。厳しい言い方になりますが、ただ皆さんが慣れていらっしゃるのは〃楽チン〃に慣れているだけで、そこに清掃の基本がないのです。

小まめに水を替えたり、小まめにモップを洗ったり誰もしません。最悪なのは・・・〃こうするよう指導されたから〃・・・どろどろ汚れた水で何度洗ってもモップは綺麗にはなりません。その汚れたモップで擦るからセラミックタイルに多く見られる雲状の汚れ模様が付いてしまうのです。

そこで乾式を提案する際、マイクロファイバーモップを実際に使い方を指導しながらお勧めしています。

セラミックタイルの防滑施工後のメンテナンスはこの手法が現状ベストだと思います。これで通常は防滑性能が随分と維持されると思いますが・・・それでも色んなケースがありましてね。・・

〃チャンとやってんですが滑りを感じ出した〃・・なんて事も正直あります。弊社はその為に常備薬的意味合いで、SLIPOUTセラミックタイル専用の滑り止め洗剤をお勧めしています。・・・其れなりに研究していますので、15~20回塗布しても光沢維持は可能だと思っています。年に1回としても・・・うまく使えば・・・ン年安全がキープされるかもしれませんね。

特殊な汚れは滑りとは全く無関係で、メンテナンス業者さんの領域となりますが、メンテナンス業者さんからの直接的なSOSには対応させていただいております。

磨き御影石の床 編

建築物はその業種形態とコンセプトの関係上、床材の選定は変化します。
例えば上記セラミックタイルは、最近スーパー等商業施設に多用されていますし、磁器タイル系は個人宅、マンションをはじめあらゆる建築物に用いられるポピュラーな床材です。

磨きの大理石や御影石(花崗岩)も、個人宅やマンション等に部分的に用いられることは結構多いのですが、全面を磨きの・・・ってことになると、大規模なホテル関係かそこそこ高級感をテーマにした建物が多いようです。(例外ももちろんありますけど・・・)

平成11年に磨きのインペリアルレッド(通称赤御影)の光沢維持に成功して以来、インパラブラック・山西黒・ベルファースト(通称:黒御影)をはじめ、多くの磨きの花崗岩の防滑に携わってきました。

防滑施工後2年以内に“滑り出したから何とかしてくれ”と苦情らしきことを言われた現場は、“無い”と言いたいところですが、白状すると1件ありました。

某ショッピングモールの磨き錆び石

施工後2ヶ月くらい経過した頃でした。現場は大阪天王寺にある某ショッピングモールです。床材は磨きの錆び石でした。“やっぱり言うてきたか”。

実は施工当日、他の箇所をメンテナンス業者さんが作業してましてね。興味本位でその作業風景を見ていたんですよ。よく訓練されているのでしょう。手際よく済々と作業は流れていきます。広い現場ですから自走式のポリッシャーも走り回っています。

“大手の業者さんは使う道具も違えば作業員の頭数も違うなぁ”・・・ナンテ感心しながら見ていましたが、フトある事に気が付きました。何かが違う?

恥かしながら元々へなちょこ銀行マンであった私ですから、自走式のポリッシャーの機能なんて知る由もありません。それでも違和感を感じた私は作業中の業者さんに尋ねてみました。

洗剤は?水は?どこから出てどこから吸い取ってるんですか?

業者さんの回答は・・・“前から洗剤が出て、次にポリッシャー、最後にバキューム”・・・
実に明快な返事が返ってきました。・・・“どうもおおきに”・・・と大声でお礼を言いつつ、それじゃぁ洗剤が残留するではあ~りませんか・・・胸きゅんどころか胸ドッキーン。

作業をマニュアル化してしまうと、人はマニュアルのみを信じて疑わない傾向があるんですかね。“今回はチクっとヤバイかもしれんナ”・・・流れゆくメンテ作業を眺めながら、私は早い時期に滑り出すことを懸念しました。

懸念したことがたったの2ヶ月で現実となりました。ゼネコンさんから連絡をいただき現場へ即行しましたよ。・・・ンで・・・手直しのために持参したのが・・・水とハンドブラシとタオルの3点セットなり~・・・です。

施設責任者とゼネコンさんが怪訝な顔をする中、滑り出した錆び石に水をかけ、ハンドブラシでゴシゴシ擦ってみると、錆び石がドンドン泡だってきました。

施設責任者が・・“今使っているのは何ですか”・・って聞くから・・“H2Oつまり水ですよ。”と答えたもんだから、更に顔が怪訝となりましたね。

“水が泡立つ訳ないじゃんか”と言われるから・・“そりゃそうですよ”。施設責任者は、私が溶剤系の何かを使って手直ししているように思ったんでしょうね。だから彼等の面前で飲んでやりました。

出てきた泡をさっと流し、ゼネコンさんと施設責任者に錆び石の滑り具合を確認してもらいました。・・・〃アレッ滑らへん〃

あの泡が錆び石から出て来たことと、3回に1回水だけで洗浄することなど、彼等に提案しその場を後にしました。

8年後、そのショッピングモールの滑りはどうなった?

それから8年後、このショッピングモールの出入り業者であり弊社の協力会社でもあるK社が、再施工の見積もりを出したので弊社に施工してほしい旨依頼してきました。

余りにも懐かしいし、その後どうなっているのか一度見てみたい気持ちもあって、K社を伴いショッピングモールを訪れました。

“当然もう滑ってるだろうな”そう思い、一部の錆び石に水を打ち乗ってみると・・・滑りを感じません。見積もりも出したって言うのにどうなってるの?

しばらくすると施設責任者が見えられて、エスカレーターの昇降口へ案内してくれました。・・・”ここらが滑りますネン”・・・チェックしてみると確かに滑ります。・・・この昇降口も8年前に施工した箇所ですが、私は当時施工したその他の場所も確認してみることにしました。

全てをチェックし終えて、複雑な気持ちになりました。滑っているのはあのエスカレーターの昇降口の一部分だけだったのです。メーカーとしては協力会社に仕事をさせたいけれど、開発者としては自分の持論の実証となる現場なのです。・・・結局はK社と話し合い、昇降口の一部分を持参していたデモキットを使いチョイと手直しして・・・ハイそれまでとなりました。

K社には申し訳ない結果となりましたが、その日の私はとても機嫌がよかったそうです。ただ感謝すべき人がいます。あの8年前の施設責任者です。彼は私の提案を忠実に実行し、そしてその流れをしっかり定着させてくれたのです。

 

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

  1. 愛弟子 より:

    統括、画像入りは大変わかりやすいですね。
    オーナイン・Mさんにもお伝えしておきます。

    しかし、このマイクロファイバーは助かります。
    日常家庭の中でも使うようになりました・笑

    今日はスーパー銭湯2カ所のデモ施工です。
    しっかり頑張って参ります!

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