磨きの赤御影石がピンクに変わった!!
滑ってもいいから元に戻してくれ!!
まず1996年8月の顧客ファイルに記された出来事から書いてみましょうかね。現場は新大阪の某ホテルの出入り口通路です。ピカピカの赤御影(インペリアルレッド)が滑るってことで仕事を頂きました。
当時はハイパーテックジャパンの加盟店として、滑り止めの営業に邁進していました。この滑り止めの”売り文句”は、
- ロケーションをほとんど変えず、滑りを止めることができる
- 施工後のメンテナンスも簡単
- 2年保証
この3つです。
施工当日、辛苦を共にしていた神田君と二人での作業となりました。養生、洗浄、溶剤塗布、中和作業と順調に作業を終え、滑り止め効果の確認をするとピタッと止まっています。
”よっしゃー”心に安堵感を覚えながら中和して洗い流し、養生を取り外しました。
インペリアルレッドがピンク色に変色!こりゃえらいことになった!
施工終了の確認を得るためにホテルの支配人を呼んで貰うことにしました。ところが8月ともなると暑くって、濡れていた床もどんどん乾いていきます。
濡れている間、真っ赤で光沢を維持していたインペリアルレッドが、徐々にピンク色に変化していき光沢もパラパラしか残っていません。・・『うわぁーこりゃえらい事になってしまった。』
間髪入れず、そこへホテル支配人の登場となります。もう言い訳なんか出来ません。滑りはしっかり止まっているけど、ロケーションもしっかり変わってしまいました。
支配人は眉をひそめて現場を検証しています。・・・そして私に話かけてきました。
セーフティさん、ロケーションがほとんど変わらないって言ってたのは嘘なの?
私は何も言い返せませんでしたよ。
初めての屈辱
事実上、赤がピンクに変わり光沢もほとんどなくなった訳ですからね。滑り止めを始めて2年目にして、初めて味あう屈辱です。
当時の私は、本部であるハイパーテックジャパンを信じ、彼等が作成した施工マニュアル通りの施工を実行するしかなかったのです。今思えば、本部である彼等自身もアメリカのマニュアルに従っただけで、専門的な知識もノウハウも持っていなかったんですね。
なぜ、石の色が変化したのか?私が問い合わせしても、誰一人として回答出来る人はいませんでした。それより「滑りが抑制されたんだから問題はない」と言われ、初めてこの仕事の本質に疑問を感じるようになったんです。
さて”やっちゃった”私にホテルの支配人は言葉を続けます。
セーフティさん、これじゃぁ工事代払えないよ。また滑ってもかまわんので元にもどしてよ
本部は滑りは止めたんだから問題はないと言うけど、プロとしてお客さんが納得してない仕事をしておいて代金は貰えないですよね。・・・私は覚悟を決めました。
支配人、おっしゃる通りです。早急に石を磨いてくれる業者を手配します。
代金は結構です。費用はすべて私共で負担させて頂きます。
厳しい経済状況ではありましたが、プロとしてこの仕事をやり抜く覚悟を決めた私です。自分に妥協したい気持ちをつい抑えて、エエ格好言うてしまいました。・・・(u_u。)
それにしても石の磨き料って高かったなぁ。当時の滑り止め工事代の約1、5倍の請求書を手にし、何度も溜息をつきましたよ。授業料・授業料と自分に言い聞かせながらも、アメリカが駄目なら、自分で納得出来る溶剤を作るしか自分を守る策はないと考え始めたころでもありました。