精肉加工工場からの滑り止めのSOS!!
転倒者続出?緊急事態発生!!
先日1月15日に頂戴したコメントは、昨年末に精肉加工工場の現場から緊急の防滑施工の依頼を受けたセーフティのメンバーからの投稿です。私の方に即座に連絡が入りましたが大変面白い?テーマだったので、セーフティが具体的にどの様な対策及び提案をしたのか、年の初めでもありますのでご紹介したいと思います。
メンバーに指示して集めた情報によりますと、
- 問題の現場は加工場と搬送通路、合わせて300平米程度
- 対象の床はカラーコンクリートで、敷設後10年経過している
- スリップ転倒が最も発生している箇所は、加工場周辺部と隣接している通路部分
- それ以外の箇所でも、時折スリップ転倒は発生しているが、幸いにも今のところ大事には至っていない。
- 工場出入り口付近は滑りを感じるが、転倒者は出ていない。
現場からの要請は年明けの3日までに何とかしてほしいとのことでしたが、基本的に不可能と判断し一旦お断りして、駄目元でその理由を説明し日程の調整を御願いしました。
提示した防滑工事の方向性
- 滑りの要因が動物性油脂だと明確である以上、弊社のME工法だけでは長期的な安全の確保が困難であること
- 加工場周辺部においては、常にラード状の油脂が定着するため、凹凸や吸盤効果で発生する摩擦力だけでは対応できない。この場合、弾力性があり凹凸もあって、その2つの摩擦力を同時に結集し得る素材でなければ、防滑性能を発揮するのが困難であること。
- 加工工場は1年365日、常に稼動している。そのため業務に支障が発生する素材は使えない。素材選択に時間が必要。
- 食品加工工場であるために、工事以降の衛生面の維持管理にも配慮しなければならないこと。
- おそらく選択するであろう弾力性と凹凸のある素材は、従来カラーコンクリートに定着する油脂汚れの数倍を滞留させる可能性が高い。故に日常的なメンテナンスの必要性あるのと、会社及び従業員さんの意識の変換、ランニングコストアップの容認が求められること。
- 防滑工事以降、素材にかかる負荷の問題。搬送にリフト等を使用する場合、その負荷を1トン以下にしないと耐久性に影響が出る可能性があること。
以上の6項目を防滑工事の方向性の叩き台とするため、会社内で早急にご検討いただくよう御願いしました。
一番適した防滑手法は?
提示した6項目に対し、加工工場は理解を示してくれました。しかしながら現場は緊急事態に違いはなく、具体的な提案を急がねばなりません。提示した6項目に準じて工場側から得た情報を元に、回転しずらくなった頭を右に左に捻りながら提案書作成に取り掛かりました。
動物性油脂がテーマの防滑は、常に床の表面に薄氷が乗っ掛かっているようなもので、弊社の独創的な溶剤系でも対応が困難となります。知恵と経験則を搾り出さなくては、顧客の納得を得ることができません。ましてや今回は多少なりともランニングコストが追従するのですからね。
提案すべき防滑手法として最適なものは・・・
エポキシ系・ロジン系・長尺シート系・・・ってところしか見当がつかないのですが、其々に一長一短ある訳で、工場からの情報を詳細に分析した結果、長尺シートを選択することにしました。
長尺シートを選択した事由は下に記しますが、何れを選択するにしても前提となる作業が必然的に発生します。圧着、接着、焼着を適正に行うためには動物性油脂の洗浄とモルタル(速乾性)の上塗りが不可欠となります・・・(詳細は省略)。
なぜ、防滑に長尺シートを選んだのか?
緊急であっても取って付けたような対策では、安全の確保はできません。何を提案するにしてもまず重要なのは、現場環境を十分に検視すること。そして現場の声が反映されたものでなければなりません。
現場に赴き調査と聞き込みを実施しました。写真撮影は厳禁と言われ目視とヒヤリングに終始、現調を終えましたが、"何回も滑った人が多い”現状に驚きとある意味"納得”を覚え工場を後にしました。
精肉加工工場の現場は、常に動物性油脂が定着します。動物性油脂は固まる性質があるので、毛細管現象をメカニズムとする溶剤系では対応できません。となればエポキシ系、ロジン系、長尺シート系となりますが、現場環境、季節、作業性、そして数年後の補修に関わることまで配慮したものでなければなりません。そこで其々について私の拙い見解を少し記してみたいと思います。
エポキシ系
最近は速乾性、弾力性能を発揮する素材も開発されているようですが、あまり期待できません。骨材との兼ね合い、乾きにくい、特に冬場は乾きにくく数日間の養生を要すること。
また材料の作り置きが出来ないこと、そして何より当工場内での作業となれば、臭気対策(シンナー臭対策)が必然となります。数年後の補修がかなり難しくなることなど考えると、今回の選択肢としてはかなり厳しいかも・・・。
ロジン系
ロジンの主成分は松脂です。一般的には骨材が練りこまれているシート状で販売されています。基本作業は必要な箇所に必要量切り取り、バーナーで焼着します。季節に左右されることはなく、作業性もよい。
鉄板や階段の段鼻(駅の階段)などにスポット的に利用されるケースが多い。凹凸と弾性があり耐用年数も長い・・・しかしながら300平米ともなると話は別問題となる。現場環境が求めているのは300平米すべてに対応可能な素材。ロジンでも不可能ではないが、時間とコストが掛かりすぎる。これも厳しいか・・・。
長尺シート系
最近は素材も豊富に揃っています。実は私事ですが、10年ほど前から室内外に関わらず必要に応じて使ってきた経緯があります。タキロン、ABC商会など結構使える素材を揃えてくれていまして、随分助かっています。
しかしながら、今回のテーマには動物性油脂が絡んでいますので、過去の経験は何の役にも立ちません。まずは各社の最新素材のサンプルをテスティングし、その上で判断する事にしました。
滑りは官能の世界
滑り止めを正確に表現するのは困難を極めます。官能的(感覚的)な部分が支配する世界でもありますから、数字的なものは感覚の表現を示すにおいてこれほど不適格なものはないのです。
目安としての位置付けに留めおくものであるから、判断が難しいのです。年の始めこんな判断の難しい提案を緊急に求められて・・・もっと楽なテーマを持ち込んでくれよナぁ・・・とボヤキながらも清々と作業を進めていきました。
長尺シートにラードを塗り、防滑性のチェック
サンプルの其々にラードを塗り分けては防滑性のチェックを繰り返し、テストしてみました。長尺シートはエポキシ系、ロジン系と比較すると防滑のレベルは低下するが、スリップを発生させるまでには至らないと感じた(思えた)。気候と作業性、イニシャルコスト等を思慮すれば、やはり長尺シートを選択するのがベターかも知れません。
以上、上記に記した内容を盛り込んで提案書を提出することになりましたが、どれを選択するかを判断されるのは精肉加工工場です。
写真撮影ですらできない現場です。各々のデモ施工で確認を取る訳にもいかず、それでもって緊急を口にする方々です。我々って言うか、滑り対策がもっとポピュラーになれば状況は変わるんでしょうがね。
昨今、滑り転倒を含め安全安心をテーマにした法令はかなり厳しいものとなってきましたが、不景気も手伝ってか・・・まだまだ道は大きく開けませんナぁ
たまに拝見させて頂いていましたが、コメントするのは初めてです。
実は今回同じような悩みをかかえています。
精肉工場とまではいきませんが、毎日油の飛び交う店。
清掃も毎日ですが、正直イタチごっこです。
以前滑りで貼りもののような施しをしてもらったのですが
非常に耐久が悪く、半年も経たずに剥がれる始末・・・
それ以来、困ってはいるものの踏み出せない状況にあります。
この精肉工場の行方が非常に気になります。
コメント有難う御座います。厨房のフライヤーから蒸散する油は従業員さんの移動量に比例し店内の至る所に移動定着します。日々の清掃は大変でしょうが頑張って継続するべきです。現場状況が見えないのでアドバイスしにくいのですが、・・・一度試してほしい事を書きます。
①厨房の出入り口にマットを敷く。(クリーニング可能なもの)
②客席は営業時間中にマイクロファイバーモップを使い、乾式で拭き取る様にする。
この場合に使う油脂分解剤としてケイ酸ソーダー『アルカリ性』の希釈液が良いと思います。界面活性剤は入ってないので床に直接噴霧しモップで拭き取る。モップは数枚準備し回転使用します。モップは汚れたら洗う事を心がけてください。
③厨房内は日々営業終了後、界面活性剤入りのアルカリ洗剤、できればPH11レベルで洗浄し、使った洗剤量の10倍以上の水で洗い流す。
以上取りあえず試してみてください。
おはようございます。
お返事を頂いてから、早速試しています。
正直②はなかなかアドバイス通りには参りませんが・・・
できる範囲でやっております。
しかし、これまでの具体的なアドバイスにびっくりしております。
以前よりはかなり滑りは抑制されたのは事実です!
ありがとうございます。
何か起こってしまった後では遅いですから!