滑りの安全安心の実現に孤軍奮闘する大手ゼネコンの戦友??
打てど響かず・・・孤軍奮闘のB氏
先日、某大手ゼネコンA社の商事部門で、商品開発・問題提起を担当されているB氏から、一通のメールが入っていました。
磨きのセラミックタイルの採用を阻止したいが、首を振らない・・・
内容は・・・A社が現在設計仕様にしている磨きのセラミックタイルを”雨の日に老人・子供が滑り転倒を起こすから、採用しないようにせよ”と進言しているが、やめようとしない。
どうか日本における滑り転倒事故訴訟の実態を詳細に教えて下さい。滑る床を滑らないようにする会社にお願いするのは本末転倒かもしれないが、どうかご理解くださり・・・と言うものです。
この会社は関西だけでも年間約4,000戸のマンションを建設しています。既に30,000戸以上の床に磨きのセラミックタイルを敷設しているとのことです。
確かに磨きのセラミックタイルは、B氏が指摘されるように濡れると滑ります。B氏にすれば、未然に滑り転倒事故を防ぎたいのに、何故玄関に、このような滑りやすいタイルを敷設するのか理解に苦しむのです。
コンプライアンスの観点においてもB氏の思考は決して間違っていません。・・・が、そこがまた難しい部分でもあります。建物には多種多様な思惑が介在します。
デザイン・美観・耐久性・機能性・安全性・その他絡む法律も多すぎて、私如きにはそのコンセプトの何たるかまでは踏み込めませんが、セラミックタイルをA社が設計仕様として採用したのにも、其れなりの事由があったはずです。
セラミックタイル 滑り止め用の溶剤を目の前でデモ
私の思惑で軽はずみなアドバイスをするには少々、心苦しい部分はありましたが、私と直接話がしたいと希望されたので翌日、A社に出向くことにしました。
B氏の出迎えをうけ、午後2時頃A社に到着。手土産に、A社が設計仕様とし採用しているセラミックタイルに、私が開発した専用の溶液で滑り止めを施し、一枚持参しました。
色合い・光沢ともに殆ど変化していないのでB氏は・・・ん・ん・・・??。見た目だけでは分からないので、取りあえずタイル表面に水をスプレーし、指でゴシゴシ擦っていただきました。
『ん・・滑りにくいね』・・・アドバイスをする前に、対策があることを示した事で、B氏との会話を何かしら和やかな雰囲気の中でスタートする事ができました。
事故が起きる前になんとかしたいB氏の想い
さて話は本題へと入っていきます。まずB氏がA社に対し、どのように問題提起をしてきたのか、そのために準備してきたデータ・資料を拝見しながら話を伺いました。
B氏から渡されたデータ・資料を拝見しながら話を伺っていく中に、滑り止めの世界に飛び込んだ頃の私が蘇ってきました。
”転ばぬ先の杖”・・B氏の思考の入口が私と同じように思えました。B氏は自宅マンションの出入り口通路で、雨が降ると子供たちがスケート遊びをしている様子を話してくれました。・・・『危なかしくって見てられないですよ』・・・
話を伺っているうちに、笑顔ではありますがB氏の言葉に深刻なものを感じました。・・・A社の設計を始め役員に至るまで、B氏の”危険予知の観点から、事故が起きる前に何とかしよう、安全対策を打とう”と言う問いかけに誰一人として回答を示してこないのです。
最悪なのは役員から、「お前何言うとんねん。事故が起きたらその時に対応したら良いじゃないか。」「建築総合保険で対応したらいいじゃん。」・・・何をつまらんことばかり言っとるんや的に一蹴されたみたいです。
内藤の独り言
役員さん、もっと勉強してほしいなぁ。ハッキリ言って保険対応はできませんよ。保険会社に聞いてごらんなさい。絶対無理ですよ。担当役員がこの程度の思考しかないから、滑りの問題は改善されないんですよ。
それでもって事故が発生したら、子会社である管理会社の管理責任として責任を押し付けるってやりかたは許せんなぁ。
もし、桃太郎侍になれるなら、1つ、人の良い生血を啜り、2つ、不埒な悪行三昧、3つ、浮世の鬼を退治てくれよう桃太郎ってんで、格好よく刀でその役員、バサッとたたっ切ってやるんですがね。・・・(冗談)
B氏の自宅マンションも、B氏が所属するA社の分譲マンションなので、”早く何とかしなくては”って気持ちに拍車が懸かるのは納得できます。私も十数年、同じ思いで活動してきたんですからね。
滑り転倒事故訴訟の事例
そこで私は、3年前にテレビで報道された、滑り転倒事故訴訟のDVDをB氏に渡しました。DVDにはスリップ事故現場で子供達が、B氏のマンションと同じようにスケート遊びをしている映像があります。
裁判は和解となりましたが、その結果、当事者であるU社は多額の和解金と和解条件の1つである”床を滑りにくくする”安全対策のため、以降毎年数万平米の滑り止め工事を余儀なくされています。
打てど響かず
A社のみならず、業界を問わず、さまざまなところでB氏と共通した悩みをお持ちの方は大勢おられると思います。実は昔の私もその中の一人だったのです。
会社組織が大きいほど、打つ太鼓の数は多くなり、その数以上に悩み、無念、悔しさが波状となってが自分に跳ね返ってくるものです。
B氏がどこまで頑張れるか期待したい。