SUBERANAI BLOG すべらないブログ

滑って困っている!知的障害者施設からのSOS

昨年の春先の出来事です。施設の責任者から悩み相談の電話が入ってきました。

スリップ事故が置きて、対策したいが予算が足りない

内容は、施設内の階段、廊下、食堂等で日常的に入所している方が滑って困っている。床は全面Pタイルが敷設されていて、出入りの業者に相談したら樹脂系のコーティングを提案され、見積もり金額を見て驚いた。手も足も出せない金額。

限られた予算の中、事故は起きるは、業者に頼べば全然予算は足らんわで困っている。何とかならないかと言うものでした。施設責任者の切実な話を聞き、1時間程度で行けることも手伝って、まあ、取り合えず行ってみるかってことになりました。

あくる日、施設に出向きました。施設は、築後1年足らずの真新しい建物です。色々あって予算を使い果たしたんだろうな。そう思いながら先ずは施設の中へ突入です。

にこやかに迎えてくれた施設責任者は、さっそくここで滑った、ここも滑った等と話を交えながら施設内を案内してくれました。一通り見て周り、その間の責任者の話を踏まえて私は提案をすることにしました。

今、緊急に施設内の床全面の滑り止めは必要ありません。

と私が言ったら責任者はホッとした感じでした。

緊急と不要不急をわけて提案

そこで私は、緊急に滑り止めが必要な箇所と、翌年以降滑り止めの対策が必要になる箇所とに分けて検討する様提案しました。

緊急を要する箇所

まずは、緊急を要する箇所として、階段部分の一部、各手洗い場の一部、食堂内の一部、浴場の床は磁器タイルで、まだ新しく滑りを感じないので翌年の対策とし、今回は脱衣場の床を対策に入れること。

翌年以降の対策箇所

そして翌年以降の対策箇所として他に、施設出入り口の磁器タイル、モルタル仕上げの他の棟への連絡路、施設内のPタイルは最後にコーティングした方が良いですね。少し考える時間をください。

そう言って施設責任者が多大に期待する中、施設を後にしました。

後は、予算との兼ね合いもあり、今回何を滑り止めの材料とするかネタを考えないと・・・・。安全を売る商売も楽じゃありませんなあ。

滑り止め対応できうる「ネタ」

化学床材に滑り止め対応できうる「ネタ」・・・考えてみると色々あります。

樹脂系ワックス

例えば、樹脂系ワックスが一般的ですね。アクリル系、ウレタン系等が代表的なものです。可塑剤の含有量、骨材の組成、含有量によって、硬化レベル、滑り抑制効果に違いはありますが、滑り抑制対策としては有効です。

問題なのは、施工者の知見と経験なんです。いくら良い材料であっても、鋏(はさみ)の使い方を知らないと良い物(顧客が満足する)には、決してなりません。

某メーカーの技術責任者の説によると、全国の施工業者において、プロフェッショナルと思われる業者は全体の2割以下程度とかなり厳しい事言ってましたよ。・・・分かるような気がします。

長尺シート

長尺シートも滑り抑制には有効です。樹脂系ワックスの中で、紫外線に最も対応するのはアクリル系と言えますが、今日の外部用長尺シートは紫外線に殆ど影響を受けません。良い商品が多くなりましね。高級感、ロケーションを無視しても構わない施設であるならば、ドンドンと使うべきかも知れませんね。

テープシール

テープシールってのもありますが、今回のテーマには不向きなのでカット。

弊社の溶剤系の滑り止めも、今回は適用外・・・だとすると、樹脂系ワックスか長尺シートに絞るしかありません。既に施設内では、スリップ転倒が発生しています。・・・後は予算内で、どう収めるか・・・。

名案をおもいつく

困ったとき頼りになる仲間が大勢いるのが、セーフティグループの良いところ。全国統括代理店の高森君にSOSのラブコールを送ることに相成りました。・・・すまんなあ・・・いつものことながら、いつもニッコリ爽やかに相談に乗ってくれるので助かります。・・・ホント。・・・ι(´Д`υ)アセアセ

実はこの時、私に名案があったんですが、予算との兼ね合いもあり高森君と話をしたかったんです。”儲けのない仕事になるかも知れないが、現地に私と同行し、私の提案する内容で見積りをしてほしい。”・・・彼は快く引き受けてくれました。

知的障害者施設や老人養護施設等においての安全、安心の対策は、他の施設に比べ更に重くのしかかるテーマでもあります。常に何が起こっても不思議でない介護の必要な人達と接している訳ですからね。

施設の満足度は???

日を改めて施設に伺いました。今回は内装業者である川井田君も帯同してくれて助かりました。実は、私のアイデアの中で彼がどうしても必要だったのです。

さっそく前回案内して頂いた施設内の滑り発生箇所へ向かいました。2箇所の階段、4箇所の手洗い場、食堂等、実際に入所している患者さんに常に付きまとう危険な場所となっているところです。

施設責任者と内装業者(川井田君)への提案

施設責任者と川井田君其々に、私は本日の目的を話す事になります。

まず施設責任者に対し、ロケーションが少し変化するが滑っている箇所を切り取って、この箇所に適したT社の製品に張り替えたいが如何なものかと尋ねました。

一瞬妙な顔つきになったことは伺えましたが、それで滑り対策ができるのならと了解してくれました。

次は川井田君です。彼には、施設の予算内で張替え工事が可能か否かを判断してもらうために帯同させていますからね。施設の図面をみながら張り替える部分を指示し、判断してもらうことにしました。

川井田君が即座にOKをだしてくれたので後は、床材の色合い等を当方に一任させてもらう事で話し合いは終了しました。今回のテーマで弊社の製品が使えないのは残念ではありましたが、滑り止めは適材適所、自分自身納得し施設を後にしました。

材料をどれにするか、川井田君、高森君に協力してもらい多少バタバタはしたものの、T社の長尺シートで、私が過去に外回りの滑り止めに採用した経緯のある製品に決定しました。

外部用の長尺シートの施工開始

8月に入り施設の方から連絡を受け施工となりました。施工は順調に終了し、滑り試験を施設責任者が実施。”おっ思っていたより、はるかに滑らんよ。これはいい。”どうやら喜んでいただいたようです。ヨカッタ。

施設から帰る車中で川井田君が一言。

外部用の長尺シートを室内のあんな箇所に使うなんて想像もしなかったですよ。
この手法はこれから利用させてもらいます。

・・・ハイどうぞ。ご勝手に。・・・とにもかくにも一件落着と言った今回のテーマでした。

そして本年度3月、また同じ知的障害者施設より電話が入ってきました。

おかげさまで、あれから一人も滑った人はいません。有難う御座いました。
ついては今年もその他の箇所の滑り止めをお願いしたいのですが・・・

本当に有難いと思った内藤でした。

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

  1. 新川 より:

    こんばんわ新川です。
    内藤様、ご丁寧にわかりやすくお返事いただきありがとうございます。

    以前のブログも読ませていただいたのですが、奥が深いとつくづく思います。私が、滑り止めを知った時に比べ日々進化しているように思えます。(私がついていけてないのでしょうか?)

    しかし、管理していかなければならない私の職業(メンテナンス)には滑りに対するテーマが必ずついてきます。

    もっと私たちも知識を得なければならないですし、意識改革・安全に過ごせる施設作りなどするためには私たちも安心して依頼できる業者選びが重要と考えています。

    選ぶ基準、見分けるポイントなど教えていただけないでしょうか?本編で書いていただければありがたいです。私たちのスタッフ、グループ会社などに知っておいてもらいたいのです。
    よろしくお願いします。

    • 内藤 憲道 内藤 憲道 より:

      新川さんへ
      コメント有難う御座います。滑り止めを真剣に考えて頂き大変嬉しく思っています。

      ご依頼の件ですが、業者の見分け方ってのは難しいと思いますよ。良い仕事というのは、現場に残る殆ど変化しない床の状態と、お客様の満足度ですが、例え床面を真っ白にし、滑りを止めたとしても、その業者の説明で、この滑り止めは〃こんなもんだ〃とお客様が考えて思い込んでしまうのがチョッと辛いですね。

      従って基本的にはホームページ上に出ている業者に片っ端に電話し、話をしてみるべきだと思います。その中で、一番納得できた業者とお付き合いされるのが良いと思います。弊社も含めてね。

  2. 新川 より:

    お返事ありがとうございます。
    勉強させていただきました。
    これからも、勉強していこうと思います。
    また相談させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。

  3. FPほりお より:

    ご活躍の様子で何よりです。

    ますます高齢化が進み、介護施設の利用が身近なものになり、他人事では無くなります。介護要員の女性がおじいちゃんを抱えるところを見たことがありますが、テクニックなのでしょうか、大したものです。感心します。
    そんな時に床が滑るようであれば事故になりかねません。貴社の商品や技術がますます広がることになるのでしょう。

    貴兄ほどではありませんが、私のブログも充実したいと常々思っています。
    まだ還暦まで少しあります。共に頑張りましょう。

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