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シリコーン樹脂系コーティング済のセラミックタイルの施工溶剤完成しました。【その2】

セラミックタイル

研究開発の為しばらく現場から離れていましたが、良いのが完成したので、また少しだけ現場復帰することにしました。

シリコーン樹脂系コーティング済
タイル・石材専用の新溶剤が完成

8年ほど前、大阪の箕面市に(株)スリップアウトをを立ち上げてから暫く一線を退くことにしていました。

理由は2つ。1つは、小生がいつまでも指揮棒を振っていたら、代理店以下滑り止めに関わっている皆がやりにくくなるのでは?と考えた事。もう1つは、小生に大きな悩みが生じた事です。小生の前にどうしても越えられない壁ができたのです。

シリコーン樹脂系コーティングと言う大きな壁が小生の思考を狂わせはじめたのです。中国産セラミックの市場と美観維持に執着さえ感じる商業施設等の今日を思えば、いつかは到来するテーマではあり予測もしてはいましたが、皆目見当がつかなかったのです・・・。

そして、また何とかしたいウイルスが小生に憑りついて『隔離』するべきだと小生が判断したからでもあります。

何とかせんといかんシリコーン樹脂ウイルスの発生源

平成24年に九州の大手ゼネコンより、熊本県八代市に建築中のスーパーマーケット床の滑り止めを依頼されたことがありました。

仕事を頂戴するのは大変ありがたい事なんですが、熊本県のしかも初めて取引するゼネコンさんが何故弊社に問い合わせしてきたのか?疑問に思い建築中の現場所長に尋ねてみました。

滑り止め業者数社が全滅

所長の話によると、敷設予定の磨きのセラミックタイルについて、九州の滑り止め業者数社から施行見積りをもらい、各々にデモ施工をさせたところ全滅。九州の業者が駄目なら関西でという訳で、また数社にタイルを送りデモ施工を頼んだが、1社も滑りを抑制することが出来なかったとのことでした。

関西の業者から『アソコなら』と紹介してくれたのが弊社だったと言うのです。

開発者としてのプライドがうずきましたね、その時。・・・数日後、ゼネコンより問題のタイルが送られてきました。見た目はいつもの磨きにしか見えません。実はこの頃、噂には聞いてはいましたシリコーン樹脂系コーティングのこと。まだ出くわしたことがなかったのです。

剥離さえすれば出来ると思っていた

通常の手順で作業を終え滑りの効果を確認するとツルツル・・・ツルツル・・・ツルツル・・・。全く効果がありません。冷や汗がでましたね。何回重ね塗りしても駄目でしたね。

それならばと販社に適した剥離剤がないか物色し色々試してみたが剥離もできず、最後にもうひとあがき。タイルを痛めない程度のパットを探し剥離剤と共に同時に使ってみたが・・これも駄目でした。

シリコーン樹脂系コーティング・・・原因追及と対策 その1

弊社なら内藤ならばと期待され白羽の矢を射られたのに・・・な~んにも出来ない。

数日、白けた日々が続きました。こんな時の小生は考えることをやめてホームセンターやらショッピングモール等を散策するのが通例です。そこはまだ小生が知らない情報が山積された場所でもあります。ある日の事、イオンモールの1階展示ブースにトヨタの高級車が展示されていました。

トヨタの高級車がヒントに

車なんて動けば良い程度でほとんど興味のない小生ではありますが、その見事に光り輝く真っ赤な車体に引き寄せられ暫く眺めておりました。

車の価格とか性能とか一応目を通しますが『うぇー・・高!』でいつも終わる貧そな小生でありますが、その日は真っ赤な車体があまりにも美しいので見入ってしまったのです。

綺麗なもんやね。この色・この輝き、吹付塗装なんやろけど見事なもんや

・・・ん、塗装???。

一瞬閃きました

速攻で事務所に戻り、小生の化学知識不足を補填する役割担当で、今は亡き稲垣氏に小生のアイディアを説明。小生の閃きは彼にとってはいつもナンセンスなことらしく『また、阿保なことを』からスタートするのですが、今回は違いました。直ぐに動き始めたのです。・・・『いつも小生を小馬鹿にするおっさんが、な~んも言わんと従ったぜよ。今回はハズレかな?・・・』

日々悩んでいる小生をみていたのでしょうかね。数日後、数社から小生が要請した材料サンプルだけでなく追加されたサンプルが稲垣氏の手配により到着しました。

今まで小生が作ってきた溶剤は偶然から生まれた反応という発見でしたが、今回は、突然も偶然も期待できない崖っぷちの状況です。自分的には少し居直ったんだと思います。当然自分に出来ないこともある。

『困ったときの人頼み』。それでも実は次の発想につながる何かを探していたのです。偶然ですが、そこに目に飛び込んできたのがピカピカの真っ赤な車だったのです。

ヒントは酸化・還元、接着・脱着、吸収・蒸散の中にありました。

シリコーン樹脂系コーティング・・・原因追及と対策 その2

真っ赤な車体からヒントを得て、己を取り戻した気分でしたね。8年もトラウマに悩まされたシリコーン樹脂系コーティング済のセラミックタイルを目の前にして(絶対この壁ぶち抜いてやる)気持ちが引き締まりました。

狙いが正解に流れ出したのは2日目でした。従来のセラミックタイル専用溶剤をベースに繰り返しテスティングを実施した結果、取り寄せたサンプルの1つがシリコーン樹脂系コーティングをすり抜けてセラミックタイルに到達したのです。

ただし、滑り止めの効果としてはイマイチのレベルです。分量調整を試みて幾度かやってみたのですが本来の効果に至りません。また壁が立ちはだかりました。(何が駄目なんだろうか?)・・・今のセラミックタイル専用溶剤が駄目なんだろうか?

実はこの後、セラミックタイル専用溶剤を作り変えることにしたのですが・・・小生が想像もしなかったビックリの″おまけ″が結果として付いてきたのです。小生が理想とする溶剤がまた偶然に出来あがるのです。

新溶剤のおまけ

従来からセーフティの施工溶剤は、塗布後1分程度で床材に反応し、溶剤が乾くまで放置しても必要以上に反応しません。その後、中和し洗浄して洗い流します。

テスト施工で新溶剤もいつものように塗布した後放置していました。溶剤が乾いていく様を見ていて″あれれ?″乾いた後、何も残留していないので驚きました。不思議に思い水をスプレーし擦ってみると、ほんの少しだけ界面活性剤らしきものが出てきました。このレベルなら塗布後洗浄しなくても何ら問題ないと思います。

確認のためテスト施工後1日残留物を放置し、水をスプレーしてみると、少し発生した泡もすぐ消えて残留物がほとんど蒸散していることが確認出来ました。何やら面白いものが偶然に出来たようですな。

新溶剤を製造する過程において、投入する界面活性剤はPH10.4のSDを○%、新開発のK-1を○%となりますが、この2つの界面活性剤と酸性物質が互いに反応を繰り返し、表面張力を維持しつつ余計な泡を抑えてしまったようです。

その結果出来上がった溶剤そのものが″まろやか?″に変化してしまいました。・・・そしてこの変化が更に面白い偶然を発揮してくれるのです。

テストで使用している磨きのセラミックタイルはセラミカクレオパトラ社の製品で、中国産のものよりかはレベルの高いものだと考えてください。

10回塗っても、光沢がほとんど変化しない溶剤に

従来のセラミックタイル専用溶剤は、1回目の塗布で光沢を維持し滑りを止めることをテーマとして制作してきました。開発者である内藤が言うのも何なんですが、2回目以降の塗布については光沢の維持が非常に難しいものであったのです。

新溶剤には私自身が驚きましたよ。

2回目塗布後、光沢に変化なし。3回目塗布・・光沢変化なし。4回・5回・・・そして、10回目も光沢に殆ど変化が見られなかったのです。

もちろんですが1回目から滑りは止まっていますが、回数を重ねる度にグリップを増していくのが何故か嬉しく思いました。

今回紹介した新溶剤の能力を以下にまとめて記します

  1. 下地が綺麗であれば、塗るだけ。乾けば何も残らない。滑りは止まっている。場合によっては水洗い不要
  2. 補填剤のK-1を投入すればシリコーン樹脂系コーティング済も施工できる。
  3. 複数回の溶剤塗布でも光沢を維持し更にグリップ力が増す。

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

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