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滑り止め施工「ME工法」とは?メカニズムは?

ME工法ってどんな意味ですか?

今でもよく問われるので簡単に説明したいと思います。

M・Eとは、「マイクロ・エステティック」の略字です。

ミクロのエステ?なんじゃそれって事になりがちですが、実は滑り止めのメカニズムにおいて其れなりの意味があるんですよ。少し時代をさかのりつつ説明していきます。

アメリカの滑り止め加盟店時代に感じた違和感

薬品処理の滑り止めは以前にも記しましたが、表面張力作用で滑りが止めると言う触込みで、15年前にハイパーテックジャパンがアメリカから導入したものです。最初に加盟店として飛び込んだ当時の私は、その理論に多少の疑問をもってはいましたが信じるしかなかったのです。

疑問を最初に覚えたのは、滑り止め処理したタイルをシャンプーで泡だらけにして、それでも滑りが止まるってパフォーマンスを目にした時です。

界面活性剤の作用で表面張力は抑えられてしまう筈なんだけどナァ・・・それでも間違いなく滑りは止まっている?

平成7年の初めての出会いは、理論よりも、見た目に何の変化もないタイルの片面がピタッと止まった事実が何よりも優先したのです。

滑り止めの正確なメカニズムは、誰一人として理解していなかった

平成11年にプール底タイルの滑り止めを、日本で初めて施工した際、数日後オーナーから『滑りにくくなったお陰で、お客さんがチャンと歩けるからやっと良い運動ができるようになったと好評ですよ。』と電話を頂戴しました。

その時に私は確信をもって思いました。

早く滑り止めの正確なメカニズムを誰もが簡単に理解できるようにしないと、何かしら間違った方向に傾いてしまうぞ。

プールで表面張力が働くのは水面だけで、水の下にあるタイルに表面張力が作用するはずがありませんよね。

それじゃぁメカニズムって何なの?って事になるんですが、当時の私・・・正直に言うと全てがボヤケていて分からなかったんです。分かっていたのはタイルに穴が開くって事だけでした。

体育会系の人間ですから化学にも疎かったんです。(今もさほど変わりませんが・・・)(u_u。)・・・それでも何回かMSDSを引っ張り出してはボーと眺めているうちに見えてきました。

故郷 唐津市が、滑り止めのメカニズムを解明してくれた

私が生まれ育った佐賀県唐津市は、焼き物で有名な小観光都市と呼ばれています。

唐津焼・有田焼・有田焼に名を借りた伊万里焼と全国的に知られていますが、史跡・遺跡の痕跡が未だに生活に根づいているような田舎町でもあります。

無我夢中で湯のみ茶碗や灰皿等を作っていた子供時代の私の記憶が、メカニズム解明に導いてくれました。

子供時代の思い出なんですが、家では当然ながら唐津焼と有田焼を食器として使っていましたね。男ばかりの5人兄弟で私は4男坊でありますから、常に母親の手伝いは指名なき決定事項として私の役割でした。(ノд・。)

母親に色々と叩き込まれたイロハの中で食器の洗い方ってぇのがありましてね。有田焼の湯呑や茶碗は磨き粉でゴシゴシ綺麗に洗え、唐津焼の湯呑や皿は水で濯ぐ程度にし、布巾で綺麗に拭き取れと教わりました。一度、唐津焼の湯呑茶碗の茶渋を綺麗に落として怒られた事もあります。

その時に母親が私に言った言葉は・・・『勘違いしたらいかんよ。唐津焼は茶渋を楽しむもんだ。反対に有田や伊万里の湯呑に茶渋が付い取ったらみたんなかと。(見っとも無い)』・・・

この頃に覚えた事は・・・茶渋は湯呑の表面上に付いているばかりでなく、湯呑の中に浸み込んでいると言うことです。

焼き物のはなし

少し横道にそれますが、後のメカニズムに関係をもってくるので、焼き物の事を簡単に少しだけ書きます。

唐津焼は陶器で、有田焼は磁器となります。有田焼の原料は流紋岩が温泉等の熱変性で白くなったもので陶石と言い、硅石と長石(硝子成分)が多く含まれています。従って、陶石を粉にし、そのまま粘土として使います。

900℃レベルで素焼きした後、透明釉を施し本焼きをします。焼き上げる温度は1300℃が目安になります。焼きあがった碗に透明感があるのは、硝子成分が溶解した影響によるものです。

唐津焼は山土を使いますが、硝子成分が少ないのでそのまま粘土とし焼けば隙間だらけの焼き物になってしまいます。そこで粘土にする際、硝子成分とを補填します。これを陶土と言います。磁器と同じ900℃レベルで素焼きをし、釉薬を施します。

この時使う釉薬には硝子成分の溶解を促進させる石灰を混入します。1200℃で本焼きしますが、石灰の影響を受け、本来1600℃レベルでないと溶解しない硅石も溶け、焼き上がりはツルツルとなるのです。磁器と違い陶器は、釉薬が焼き物の水漏れ防止の役割を果たしているのです。

数億年の自然の営みの中、石が風化し砂となり土となり・・・そしてタイルと言う焼き物なった。・・・少々乱暴ではありますが間違いではありません。

以前ブログで石やタイルの其々の共通した主成分が硝子成分(シリカ)とアルミナであると述べましたが、今回のテーマで少しはご理解頂けると思います。補足するとアルミナについては主に長石に含有されていると思います。

さて、本題に入っていきますが。

焼き物(タイル)の成分構成

陶器と磁器の違いについて簡単に記しましたが、焼き物(タイル)の基礎を知らないと、薬品系滑り止めは決してうまくいきません。

自然石は成分的に幾つかに分類されますが、化石岩系(主に大理石)や堆積岩のなかでも凝灰石に位置づけされる岩石と花崗岩に大別して分類すると理解し易いと思います。タイルとほぼ同じような成分構成となるのが花崗岩となります。

成分構成は似ていますが、成分粒子構成は大きく変化します。実はこの部分を熟知することが、滑り止め施工において最も重要なポイントとななります。

ついでにセラミックタイルにも少し触れてみます。基本材料となるのは岩石です。有田焼きは材料となる岩石をそのまま粘土にしますが、セラミックタイルの場合、事前焼結と言って岩石そのものを粘土にする前に高温で焼きます。

岩石に含まれている不純物を燃焼させ、硝子成分の純度を上げるためだと私は考えています。事前焼結の際の温度は、岩石によって多少違いがあり、メーカー毎のノウハウがあるみたいです。事前焼結した岩石を粉砕し、粘土(ボンドと呼びます)にし、1300℃直前の温度(例えば1280℃)に設定し焼き上げます。

タイルと石材の共通点が何であるか少しはご理解いただいたと思います。成分構成で僅かに違うのは、硝子成分の含有量だと考えてください。

成分構成は似ていても、成分粒子が違う

しかし、成分粒子構成となると、タイルと石材は大きな違いがあります。結晶構成の石材とそれらを粉砕し、または風化し土となったものに硝子成分を補填し、焼き上げたタイルとは成分粒子の大きさが違うのです。

そして、その成分粒子の違いが、薬品反応に大きな影響を及ぼすことになります。

成分粒子の大きさが違うと言うことは、当然ながら粒子結合で形成された隙間の数にも変化が生じてきます。隙間の数?ナンじゃソレって事になりますが、これが滑り止めME工法のメカニズムを語るに重要なポイントとなります。

隙間の数をどう操るか?・・・数とパワー(吸盤)との関連性を導き出すために苦労した件(くだり)の話は以前に少しだけ書いていますが、以下そこら辺を説明します。

防滑のメカニズムを探求することになった経緯

11年前に、セーフティがノンスリップマスターと決別した理由はそこにありました。

当時のノンスリップマスター本部や加盟店において、滑り止めのメカニズムや技術に関心はあっても、それはあくまで本部作成のマニュアルの範疇を飛び越えるものではなかったのです。

本部と言っても所詮、溶剤の輸入業者に過ぎませんし、契約上の縛りもあり、製造する事もできないのですから、理論的要素や施工手法は米国からの情報が唯一の頼みだったのです。

そこへ小難しい内藤の質問攻めに四苦八苦で、・・・そう言えば白髪さん元気にしているかナ。彼女だけは割りにしっかりしていたナ。

ポール・チョウ(ノンスリップマスター輸出元社長)に私の幾つかの作品?を初めて見せた時、彼が驚いた話は以前に記したと思います。実はその時、メカニズムについても彼に説明したんです。

そして彼がしばらく考え込んでから私に言った言葉は、

内藤よく勉強したね。あなたの技術力と発想はとてもすばらしいが、一番の問題はね、床材の種類が多すぎることよ。
仮におのおのに作ったとしても、溶剤が多種少量の世界になってしまう。

我々は少種多量でなければビジネスにならない。だからあなたの発想と溶剤はあなたの世界で活かしなさい。

「やれるものならやってみろ」と言う事だったんでしょう。それから2ヵ月後、滑り止めの新しい世界を目指して加盟店を脱会。自分で考えたメカニズムを証明するために茨の道を歩くことになってしまいました。

ME工法の特異性

ME工法の基本は床材(石材、タイル)の結合した粒子の組成構造・基本成分を想定し理解する処にあります。

結合した粒子成分の70%強がシリカである訳ですから、大半がシリカの粒子で結合していると考えるべきです。粒子結合であれば其れなりの隙間がある筈です。

そしてその隙間を溶剤の薬品反応で溶かして広げてやると、水の入り口が出来上がり、スタッドレスタイルと変化を遂げるのです。

・・・ん・でもって、ここまでは考案者レベル(米国的)の段階でして、特定の溶剤だけで施工すると滑りは抑制されても、床材其の物の質感やロケーションが大きく変化してしまいます。

太めの隙間で対応するか、細めでいくか、小さく反応させ数で対応するか、溶剤を製造の過程で床材に合わせテストし、調整提供するME工法の真髄はここにあります。

床材の組成構造・基本成分を想定し理解すると言うことは容易なものではありません。机上で習得し得るものは僅かに過ぎません。

薬品反応も床材毎に変化しますから経験則に基づくデーターが重要ですし、新素材(内藤的表現ではウィルス)が出現したらその都度、適正溶剤(ワクチン)を開発し、どう使うかマニュアル化(処方箋みたいなものです)に努めてきました。

とは言え、全てがマニュアル化できないのが、滑り止めの難しさでもあります。施工対象の床材と顧客のニーズは常に変化していきますからね。

セーフティのME工法の大きな特徴と言われている部分を紹介するならば、一般的に流通している床材を基本にベースに、層別調整した基本系溶剤が常に15種類常備されていると言うこと。

ちょい難しい磨きの石材等は、常に現場で微調整可能な調整補助溶剤が数種あり、施工担当者(教え子)は自在にそれらを操って施工対処できるだけの能力をもっていること。・・・私的には親心?でそう思っていますが・・・ね。(^-^;

つらつらと書き並べましたが、こんなにすばらしい知識と技術があるのに何でもっと大きな仕事が来ないのでしょうかね。・・・(u_u。)

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

  1. SONODA より:

    ご無沙汰をしてしまいました。
    が、その分、一気にブログを楽しませて頂きました!

    親父さんの「やりたいことを行動に移す」は少なからず
    SONODAもです。九州男児ならぬ九州女児ですから(笑い)

    統括のお陰で、こんな私でもME工法を売ることができます。
    まだまだ現場経験不足ですが、そのうち「現場のSONODA」と
    言われるくらいになりますよ!きっと!
    末永く可愛がってくださいm(_ _)m

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