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美しいコバルトブルーのタイルを復活させよ!10年振りのマンション再施工【前篇】

私の歴史の1ページを飾り自信作でもあった
枚方の某マンションのタイルが無残な姿に・・・。

4月、久しぶりに京都のH社から仕事の電話が入りました。8年振りに電話くれるなんて珍しいこともあるもんです・・・。何事かと思いきや9年前に施工した枚方市のPマンションの滑り止め施工の相談でした。

H社の営業担当者の説明によると、Pマンションは今年の1月に他社により滑り止めの施工を実施したとの事。ところが施工後まもなく居住者から不評不満が多発し、再施工の方向へ話が進んだらしい。施工後、日も浅いので予算の問題もある中、一度現場へ出向き手直し出来るようなら何とかお願いしたいとの事でもあった。

Pマンションに敷設されているタイルは、珪藻土をメインとした塗り床材でコバルトブルーに仕上げられた特殊なものです。9年前施工にあたり、私自身もそれなりに悩んだ床材です。滑りを止めて且つ、あのすばらしいコバルトブルーを維持しなければ現在の溶剤系滑り止めを世間に発表、提供した私のプライドが粉砕してしまいます。

その後の詳細は9年前8月の私のブログに記していますので省略しますが、あの難しいタイルに滑り止め施工を実施した業者がどんな施工をしたのか興味が湧いたので取り急ぎ出向くことにしました。

なぜエポキシを塗る???

Pマンションを訪問するとH社のA氏と理事長が既に待機していましたが、私はタイルを見て我が目を疑いました。真っ青なコバルトブルーがうす黒い青?に覆われているではありませんか。一体何をしたのか?

よく見ると全面にエポキシが塗布されています。しかも立ち上がり部分までご丁寧に塗られています。

エポキシ?このタイルにエポキシ?

私の頭の中でこの言葉が飛び交いましたよ。”H社も電話くれた際に、エポキシで滑り止めを実施したと言ってくれたらいいのに”腹立たしさを抑え理事長にどうしたいのか尋ねました。理事長としては施工前に近いブルーにしてほしいとのこと。

エポキシが邪魔で本来の色に戻せない・・・

手直しの為に私が持参した秘密兵器?はエポキシの上にも塗布適用はしますが、エポキシそのものが邪魔になります。青色は少し濃くはなるものの本来のコバルトブルーにはなりません。とりあえず色付けをしてみましたがやはり青色が少し濃くなった程度でした。

私がこのブログに記す事は、私のノウハウが多少なりとも同業者の方々のヒントになっていることと、私の仕事の記録でもある訳ですから、苦労した現場は基本としてありのまま記すようにしています。関係者の方々にはご理解くだる様宜しくお願いいたします。

さて青色は少し濃くなったものの、以前のコバルトブルーには程遠く居住者の皆さんを納得させるレベルには至りませんでした。

そもそも何故に美観を有したマンション出入り口に滑り止めとはいえ、エポキシを採用したのか?8年もの間、疎遠であった弊社にH社が連絡してきたのか?そこらの話は次回より記していきたいと思います。

とんでもない依頼を受けるか受けないか?

弊社の評価を求めている訳ではありません。弊社の開発した手法を用いた同業他社は多く存在します。私は我々の手法・工法をエポキシと同様に本件の土俵に上げて検討してほしかったというのが本音です。

5月に入りH社からデモ施工の依頼をうけました。ある意味では、とんでもない依頼と言えます。

  1. エポキシを一部剥離し滑り止めを施す
  2. の後防滑を施す
  3. 次に防滑性能を維持させた状況にしつつ、タイルをコバルトブルーに仕立て直す

という作業をやってくれとの依頼ですからね。

一旦この作業を施すと、今回の後始末を弊社がやらせてもらいますって言う意思表示にもなりかねませんからね・・・。

H社の担当者との電話のやり取りの間、私は頭の中で自問自問いする始末。エポキシを80㎡剥離するだけでも大変な作業となる。

今回に限っては予算が少ないし、どこがいくらずつ負担するのか話し合いの最中らしいし、前回(10年前)の施工において学んだ事として、Pマンションにはカスタマーハラスメントを地でいくようなクレーマーが存すること。エポキシの剥離がなければ何等問題はないのだが・・・等々。

期待に応えるため覚悟を決める

結果的には覚悟を決めました。理由は10年前の弊社の施工を支持し、喜んでくれた居住者の方が多く存在する事を理事長が話してくれたこと。中でも10年前に私が記したブログを示し、弊社に連絡をとるよう指示してくれたT氏の期待に応えなくてはいけないと言う気持ちが、私の背中を押したのでしょうか。

デモ施工を実施。驚いたことに当日は現理事長と副理事長・次の理事長まで立ち会ってくれました。私一人で伺った事もあってか、私が施工に専念できるようにバケツを手に数回も水を汲んできてくれました。

マンションの散水栓が不調で隣接している公園から汲んでくるしかないからです。有難い事です。こういう人達のためにも邪念は捨てることに・・・捨てましょう。

約1㎡のデモ施工で3時間(笑)

剥離しては乾燥させ、防滑溶剤を塗布しては乾燥させ、コーティングしては乾燥させ、約1㎡のデモ施工終了。コバルトブルーも復活し滑りも止まった。所要時間約3時間。・・・デモ施工を終えて本番を想定。・・・施工日程を2日としたらちょいシンドイか・・。

帰宅後、施工を2日でこなす為の対策を検討。

  1. エポキシの剥離をエポキシ塗布したF社に頼めないかH社に協力を要請。
  2. 事前に居住者に対し施工への協力要請の徹底。(H社・理事長)
  3. エポキシの剥離剤は刺激性が激しい為、作業者に対し安全対策の徹底。
  4. 剥離後の回収物の管理。
  5. 滑り止め施工溶剤の選定。
  6. コーティング施工時の居住者の現場立ち入りの調整。

等。

H社に要請したF社での剥離は”こんな予算では出来ない”と一蹴されたと連絡を受け、F社の誠意のなさを痛感。結局F社のケツを拭かされるお人よしを演じることになってしまいました。・・・そりゃー誰もやらんわなあ~。・・・内藤の心のささやき・・です。

5名で挑んだエポキシの剥離

施工当日。本日はエポキシの剥離がメインとなるので総勢5名で臨みました。

通常、コーティングやワックス等の剥離は一般的な剥離剤で溶解させ、ポリッシャーを回し、バキュームで吸い上げていけば簡単に取り除く事が出来ます。80平米程度であれば通常1~2名でしかも短時間で作業を終えるレベルです。

すべてを手作業で

エポキシやアクリル系の剥離となるとそう簡単にはいきません。特殊剥離剤を塗布しても、柔らかくなるだけで溶解しません。従ってポリッシャー、バキュームが使えないので、すべてを手作業で取り除いていかなければなりません。

しかも、剥離剤で一旦柔らかくなったエポキシは、時間経過と共に徐々に硬くなっていきます。手早く処理しないと刺激性の強い特殊剥離剤を何度も塗布する事になるので必死です。

全員下向きとなりケレンとスクレバーで手早く取り除いていきますが簡単にはいきません。柔らかくなったエポキシには若干粘りがあります。這いつくばって、剥くっては缶に入れ、剝くっては缶に入れ・・・本来ならば絶対にやらないであろう作業を全員黙々とこなしています。

途中、皆の息が上がった所で、短時間の休憩を数回とりながら1回目の全床面の剥離作業を終了。

エポキシの剥離を他社が嫌がる理由

1回目・・・?実はエポキシの剥離を他社が嫌がる理由がここにあるのです。

溶解しないから、はぎ取る作業をやるわけで、床面の僅かな凹凸部とタイル目地には必ずエポキシが残留します。しかも剥離作業中には残留しているか否か全くわからない。床面が乾いてはじめてあちこちの残留が目に付くのでやっかいなのです。

1回目の剥離作業を終え休憩していると、居住者らしい年配の方が現場を歩行されました。記すべきかどうか思案しましたが記録でもあるので記します。・・・『なんや、目地に残っとるやないけ。契約してやらしとるんやからちゃんとやれ。』・・いやはや・・いきなり唾を吐かれてしまいました。

ダイヤモンドブラシなら早いのだが・・・

実はエポキシやアクリル系の剥離の手法としてもっと簡単な方法があります。ダイヤモンドブラシをポリッシャーにセットし高速回転させればある意味、楽にエポキシを除去できたかもしれません。弊社も所有していますが、今回の現場でははじめから使用する予定はありませんでした。

たとえ新品のダイヤモンドブラシであっても80平米もあれば1回で使い切ってしまうでしょうかね。・・・予算の半分近くもする様な消耗品はさすがに内藤と言えども今回の予算では使えませんでした。

2回目の剥離作業

休憩後、2回目の剥離作業を開始。残留しているエポキシを目地を中心に削り取っていきます。ただ黙々と地味な作業を続け、滑り止め溶剤を塗布可能なレベルになった頃は午後4時半を経過していました。

その間にT氏の奥様にお茶の差し入れを頂いたり、理事長には長時間、居住者の誘導をして頂いたりと大変お世話になりました。

予算が少なかろうが、何か言わんと気の済まないクレーマーにウンチク言われようが、10年前の弊社の施工を喜んで受け入れてくれた方々の期待を裏切る訳にはいきませんし、私自身がこのコバルトブルーの床材が好きで元のレベルに戻したいと考えているのですから、当然最善は尽くすべきです。

滑り止め溶剤を塗布し、翌日の作業に備えチェックを終え、現場を後にしたのは午後6時を経過していました。本日の持ち合わせた体力は完璧に使い切りました。・・・ああ・疲れた・・・

後編へつづく

この記事を書いた人

内藤 憲道

内藤 憲道

多種多様の床材や状態に合わせて滑り止め溶剤を調剤し、美観をまったく損なわずに滑り止め効果をつくる防滑のエキスパート。溶剤系滑り止めでは、業界の第一人者。全国で活躍する防滑業者の多くは、内藤の理論がベースになっているとかいないとか。メンテナンス業界では防滑に限らず床材のドクター(研究者)として知られ、大手ゼネコン、タイルメーカーはもちろん、同業者から現場相談を受けるなど、(一部では)圧倒的な信頼を得ている。

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